[P36-5] 僧帽弁置換術・Potts短絡・肺高血圧治療薬で胎児期より経過観察中の、Apical hypoplasia型拘束型心筋症に伴う重症肺高血圧症の16歳男子
Keywords:拘束型心筋症, 肺高血圧, Potts短絡
【背景】Apical hypoplasia型拘束型心筋症(AHRC)は、早期に重症肺高血圧(PH)を来すことがある稀な心筋症である。PHの有無を含め、国内外の症例像・重症度はさまざまで、疾患の全体像は不詳である。Potts短絡は大動脈・肺動脈間の短絡で、重症PHへの適応が注目されている。重症PHに対しPotts短絡を施行し良好な経過のAHRC症例を報告する。
【症例】症例は胎児期より経過観察してきた重症PHの16歳男子。胎児期は左室の小ささを指摘されていた。乳児期に僧帽弁狭窄逆流(ハンモック弁)と重症PHを呈し、一歳で僧帽弁置換を施行したが、PH(特発性および左心疾患に伴う高血圧症)は改善しなかった。supersystemic PHによる右室拡大のため左室が相対的に小さくみえるものの、高い左室拡張末期圧が右室左室連関による結果では説明困難なため、左室のrestrictive physiologyの存在が考えられていた。左室心尖部が低形成であり、左室が丸い形態と特徴的な心室壁運動から本症例をAHRCと診断した。
本人・家族は、積極的治療として、心肺同時移植よりPotts短絡術を選択した(13歳で施行)。Potts短絡術後の本症例の酸素・NO・PGI2負荷(14歳)では、肺血管拡張は必要だが(肺血管抵抗12→6 U*m2)、静注PGI2による強い肺血管拡張は左室拡張末期圧をさらに上昇させる(24→31mmHg)ため有効でなく、肺血管拡張薬としては静注薬でなく3系統の内服・吸入のみを使用中である。術後3年経過した現在、本症例のPotts短絡は両方向性(ほぼ等圧)で、ときに血痰を生じるものの、NYHA 3で外来通院中である。
【結論】AHRCの疫学を明らかにし、治療戦略を確立するために、重症PHを来し得る基礎疾患としてAHRCの覚知は重要と考えられる。Potts短絡は、重症PHに対する治療選択の一つになり得る。
【症例】症例は胎児期より経過観察してきた重症PHの16歳男子。胎児期は左室の小ささを指摘されていた。乳児期に僧帽弁狭窄逆流(ハンモック弁)と重症PHを呈し、一歳で僧帽弁置換を施行したが、PH(特発性および左心疾患に伴う高血圧症)は改善しなかった。supersystemic PHによる右室拡大のため左室が相対的に小さくみえるものの、高い左室拡張末期圧が右室左室連関による結果では説明困難なため、左室のrestrictive physiologyの存在が考えられていた。左室心尖部が低形成であり、左室が丸い形態と特徴的な心室壁運動から本症例をAHRCと診断した。
本人・家族は、積極的治療として、心肺同時移植よりPotts短絡術を選択した(13歳で施行)。Potts短絡術後の本症例の酸素・NO・PGI2負荷(14歳)では、肺血管拡張は必要だが(肺血管抵抗12→6 U*m2)、静注PGI2による強い肺血管拡張は左室拡張末期圧をさらに上昇させる(24→31mmHg)ため有効でなく、肺血管拡張薬としては静注薬でなく3系統の内服・吸入のみを使用中である。術後3年経過した現在、本症例のPotts短絡は両方向性(ほぼ等圧)で、ときに血痰を生じるものの、NYHA 3で外来通院中である。
【結論】AHRCの疫学を明らかにし、治療戦略を確立するために、重症PHを来し得る基礎疾患としてAHRCの覚知は重要と考えられる。Potts短絡は、重症PHに対する治療選択の一つになり得る。