The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

心筋心膜疾患

デジタルオーラル(II)37(P37)
心筋心膜疾患2

指定討論者:石井 卓(東京医科歯科大学 小児科)

[P37-5] 拡張型心筋症(DCM)を合併した肺動脈閉鎖を伴う心室中隔欠損症(PAVSD)にCarvedilolが著効した1例

小田中 豊1, 蘆田 温子1, 尾崎 智康1, 岸 勘太1, 片山 博視3, 小西 隼人2, 根本 慎太郎2, 芦田 明1 (1.大阪医科大学 小児科学教室, 2.大阪医科大学 小児心臓血管外科, 3.高槻赤十字病院 小児科)

Keywords:DCM, PAVSD, Carvedilol

【背景】先天性心疾患にDCMを合併する報告は、稀で予後も不良。【症例】4歳5ヶ月、女児。PAVSD、両側Blalock-Taussig shunt施行、根治手術待機中。2歳4ヶ月に難治性てんかんを発症。2歳10ヶ月、ウィルス性気管支炎で入院加療。MSSA菌血症(入院9日目)を合併、抗菌薬治療にて改善。入院26日目、活気不良、嘔吐症状が出現。心エコーでも、LVFS20%と低下、BNP 4947pg /mLまで上昇を認めた。呼吸管理・強心薬 、利尿剤持続を行い、ICUにて全身管理。原因検索も含め、心臓カテーテル検査および心筋生検を施行(入院46日目)。結果、冠動脈異常は認めず、右室拡張末期圧上昇(18mmHg)、右室EF低下(22%)、左室容量増加(270%)、左室拡張末期圧上昇(16mmHg)、左室EF低下(36%)を認めた。Qp/Qs=1.8、平均肺動脈圧23mmHg、Rp=1.8。心筋生検では、「炎症細胞浸潤は見られず、不整な核を有する心筋繊維でDCMに矛盾なし」との所見。有機酸代謝異常、アミノ酸代謝異常も認めず、DCMと診断。根治手術や容量負荷を軽減する手術に関しての適応はないと判断し、抗心不全治療をする方針。強心薬を併用して、Carvedilol 0.0125mg/kg/dayより開始。約4ヶ月かけて0.1mg/kgまで増量。徐々にBNPの低下(500pg/mL)を認め、心拍数も100程度まで低下を認めた。心エコーでも、LVFS=30%前後で悪化を認めず、強心薬を減量し、開始後4ヶ月で中止、5ヶ月で退院とした。外来でさらにCarvedilol0.5mg/kgまで増量。発症後8ヶ月の心臓MRI検査では、左室の一部に繊維化の所見を認めたが、全体的にvariabilityを認めた。現在1年6ヶ月経過、BNPは20-30pg/mL、心機能もLVFS 35-40%まで改善。ミトコンドリア呼吸鎖の遺伝子に関しても提出し結果待ち。【考察】急性心不全の鑑別として、心筋炎や虚血性疾患、肺血流増加などが考えられたが、心筋生検の所見より心筋症と診断。治療においては、初期にCarvedilolに強心薬を併用し維持量まで増量が可能であった。