The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

心筋心膜疾患

デジタルオーラル(II)39(P39)
心筋心膜疾患4

指定討論者:津田 悦子(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

[P39-3] 劇症型を含む4回の急性心筋炎を繰り返した11歳男児例

関 俊二1, 上野 健太郎2, 西畠 信1 (1.鹿児島生協病院 小児科, 2.鹿児島大学病院 小児科)

Keywords:心筋炎, 再発, 心電図、心エコー所見

【背景】小児心筋炎の病態像は軽症から重症まで多岐に渡る。特に劇症型心筋炎は迅速な介入が必要であるにも関わらず、身体所見は非特異的である。今回4回の発症にも関わらず、早期介入によりほぼ後遺症を認めず治療できた症例を提示する。【症例】11歳男児、家族歴、既往歴は特記なし。2歳時に先行する発熱に続き急激な循環不全を呈し、心エコーで壁運動の低下、心筋肥厚を認めた。心筋炎と診断され、経皮的心肺補助装置(PCPS)と免疫グロブリン静注療法(IVIG)で救命し得た。2回目は6歳時、インフルエンザA罹患後に心電図でV2-6のST上昇と、心エコーで心筋肥厚を認め、診断された。6日間のPCPSとIVIG、ステロイドによる治療で心機能は改善した。3回目は7歳時、インフルエンザBの罹患後に、心エコーでの心筋肥厚と、心電図でV5, 6のlow voltageを認め診断された。IVIG投与を行いPCPSを回避できた。4回目は10歳時、インフルエンザA罹患に続いて、倦怠感と心電図でのP波増高、III、aVFで陰性T波、心エコーで心筋肥厚を認め心筋炎と診断された。IVIG投与で心電図波形と心筋肥厚は徐々に改善し10日間の入院後退院した。【考察】本症例において、診断の決め手となった所見は心電図と、心エコーによる心筋肥厚だった。心筋炎を疑った場合は心電図、心エコーを積極的に実施することが重要である。また、繰り返す急性心筋炎に対するsusceptibilityの精査として、心筋炎との関連が指摘されているHLA alleles DQ8を本児が有していることが判明した。このような遺伝的背景が心筋炎のsusceptibilityを評価する上で有用である可能性が示唆された。【結論】補助循環を要する劇症型2回を含む、急性心筋炎を4回繰り返した症例を経験した。急性心筋炎に対する迅速な介入のためにも、心電図、心エコー所見は重要である。