[P39-4] 心筋生検で石灰化病変を認めた急性心筋炎の一例
Keywords:急性心筋炎, 心筋生検, 石灰化
【背景】急性心筋炎急性期の心筋病理で石灰化像を呈する症例は稀である。【症例】生来健康な11歳女児。発熱、咽頭痛、筋肉痛で発症、その翌日より嘔気・嘔吐と傾眠が出現し、発症6日目に胸部不快感を訴えて前医を受診した。血液検査で逸脱酵素とBNPが上昇し(AST 3,041 U/L, ALT 3,216 U/L, CK 638 U/L, BNP 4,282 pg/mL)、心臓超音波検査で左室収縮能の低下(LVEF 37%)と心嚢液貯留を認め、急性心筋炎が疑われて当院に搬送された。強心薬による心不全治療に反応して逸脱酵素は速やかに改善し、心機能も次第に回復した。発症13日目に行った心筋生検の病理像では、炎症細胞の浸潤は軽度に留まった一方で、線維化および心内膜側や心筋線維の間などの血管分布に一致した石灰化病変を認めた。また、心臓MRIでは両心室心筋にT1/T2高信号と心室中隔中層の遅延造影陽性所見を認め、心筋炎とそれに伴う心筋浮腫に矛盾しない所見であった。ウイルスPCR・抗体検査に有意な所見はなく、代謝・膠原病関連検査も正常であり、発症1か月後に後遺症なく退院した。退院後の心機能は正常化し、発症半年後にフォローアップの心筋生検を行ったところ、間質の線維化は残存するものの石灰化像については認めなかった。【考察】新生児期から小児期にかけてのウイルス性心筋炎にCT検査などでびまん性の心筋石灰化像を認めた症例の報告は散見されるが、本症例のように病理学的に微細な石灰化像を検出した報告は少ない。本症例では心嚢液貯留や心筋浮腫など心筋中膜から外膜にかけて炎症の主座が存在したことを疑わせる所見があり、心筋内膜の生検で血管に一致した石灰化像を認めたことは冠血流の上流となる心筋中膜・外膜の炎症を反映している可能性があるが、確たる機序は不明である。急性心筋炎急性期の心筋生検の経験を蓄積し、本症例のように特異な病理所見を共有することは、本疾患の病態解明ならびに予後向上に資するものと考えた。