[P40-2] 炎症性腸疾患治療中に発症した薬剤性心筋炎の小児例
キーワード:心筋炎, 薬剤, 炎症性腸疾患
【背景】薬剤性心筋炎は稀ではあるが様々な種類の薬剤の使用において遭遇する可能性がある。今回メサラジン投与開始後に心筋炎を発症したクローン病(CD)小児例を経験した。【症例】CDの15歳男児。13歳妹もCDで、メサラジンにより発熱し薬剤リンパ球刺激試験(DLST)陽性歴あり。【経過】1年前より反復する下腹部痛が出現し、下血の精査のため当院を紹介受診した。著明な体重減少、下腹部全体に圧痛を認め、下部消化管内視鏡検査およびカプセル内視鏡検査を施行しCDと診断した。家族歴を考慮しメサラジンを少量より開始し、副作用のないことを確認し漸増した。メサラジン投与開始後12日目に38℃台の発熱、14日目に軽度胸痛が出現した。15日目に胸痛症状が増悪し心筋逸脱酵素の上昇および胸部レントゲン上心拡大、心電図上の虚血性変化を認めた。心臓超音波検査では心嚢液貯留や弁閉鎖不全は認めなかったが、左室収縮能はびまん性に低下(EF30%台)を認めた。胸痛の原因検索では明らかな異常は認めず、薬剤性心筋炎の可能性を考慮し同日からメサラジンの内服を中止し、プレドニゾロンを開始した。4日後に胸痛は消失し、心拡大、心機能も改善した。その後も心電図所見は遷延したが、薬剤中止11日後にトロポニン、BNP等も正常化した。心筋炎の原因検索として各種ウイルス検索等を行ったが感染症は確認されず、メサラジンに対するDLSTで高値を示しておりメサラジンによる薬剤性心筋炎と診断した。【結語】炎症性腸疾患におけるメサラジン投与による薬剤性心筋炎は稀で、小児例の報告は極めて少ない。薬剤性心筋炎は何らかの疾患に対する薬物治療中に発症し、原疾患の臨床像が臨床経過に大きく影響し診断に難渋することがある。原因薬剤の中止が最も効果的な治療であり、早期に改善が得られるため、薬剤性心筋炎を鑑別に上げることが極めて重要である。