[P40-3] 劇症型心筋炎の経験から考える、循環器救急に対する二次・三次医療機関の連携
キーワード:心筋炎, ECLS, 連携
【背景】近年, 積極的なextracorporeal life support (ECLS)装着による死亡/神経学的後遺症の回避例の報告が増えているが, 劇症型心筋炎はいまだ致死率が高い. 劇症型インフルエンザ心筋炎と診断後, 三次医療機関へ転院搬送したが救命できなかった自験例を通じ, 二次医療機関での初期対応や三次医療機関との連携における課題を検討した.【症例】基礎疾患のない14歳男子. ワクチン未接種でインフルエンザに罹患し, 第1病日に近医でLaninamivirを処方された. 第2病日から全身痛と嘔吐が出現し, 第3病日に他院で補液を施行された. 帰宅後意識レベルが低下し当院へ救急搬送されたが, 搬送中は正常血圧でせん妄と診断された. 到着時, JCS1であったが, 血圧・SpO2が測定不可能, 心電図上ST上昇を認めた. 末梢静脈路を確保後, 心臓超音波検査でLVEF 40%の収縮低下を認め, 病着1時間後に急性心筋炎と診断された. ただちに三次医療機関へ転院依頼したが, 直後にJCS20, 喘ぎ呼吸となり, ドパミン持続静注開始後に人工呼吸管理が開始された. アドレナリンが静注され, 病着2時間後に三次医療機関PICUへ転院搬送された. PICU到着直後に脈拍触知困難となり, 心機能はLVEF 14%と悪化し, 胸骨圧迫が開始され, 1時間後にECLSが装着された. ステロイドパルス療法と免疫グロブリン療法も開始された. ECLS開始後も循環動態は安定せず, 心タンポナーデを合併し, 心嚢ドレナージが施行された. 転院23時間後に血液浄化療法も開始されたが, 多臓器不全が進行し, 転院32時間後に死亡した.【まとめ】最重症の心筋炎を救命するためには, ECLS装着可能な三次医療機関へ可及的速やかに搬送することが重要である. 自験例から, 非特異的症状であっても心筋炎と診断できるよう一次医療機関に啓発と, 円滑な搬送に向けてのシミュレーションを行った. 早期から家族へ精神的ケアを行える体制を作ること, ワクチン勧奨による一次予防が今後の課題である.