第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラル(II)50(P50)
術後遠隔期・合併症・発達7

指定討論者:木村 成卓(慶應義塾大学 外科(心臓血管))

[P50-3] 膜様部VSD閉鎖術後に生じた巨大心室中隔内血腫の1乳児例

松田 健作1, 落合 由恵1, 近藤 佑樹1, 松岡 良平2, 藤本 智子1, 馬場 啓徳1, 渡邉 まみ江2, 宗内 淳2, 徳永 滋彦1, 塩瀬 明3 (1.九州病院 心臓血管外科, 2.九州病院 小児科, 3.九州大学病院 心臓血管外科)

キーワード:先天性心疾患, 心室中隔内血腫, VSD

【背景】先天性心疾患手術における心室中隔内血腫(IVSH)は非常に稀な合併症であり、多くが膜様部VSD閉鎖術後に起こるとされているが、その治療方針は定まっていない。【症例】5ヶ月, 4.7 kgの女児。心エコーではperimembranous trabecularに10mm大の大きなVSDを認め、心臓カテーテル検査ではQp/Qs 3.07, Rp 3.75, Pp/Ps 0.90と高肺血流による重症肺高血圧症を認めた。酸素負荷への反応は良好であり一期的根治術の方針とした。手術ではVSDは型通りGORE-TEX patchを用いてpatch閉鎖を行なった。ICU帰室後より頻回の心室期外収縮(PVC)を認めたため心エコーを施行したところ、心室中隔のVSD patch閉鎖部下縁から心尖部方向にかけて約30mm×20mm大の左室側に突出する大きな血腫を認めた。PVCはオノアクトで改善し、その他の不整脈は出現しなかった。左室流出路狭窄(LVOTS)もなく血行動態は安定していたため、保存的に経過を見る方針とした。その後も血腫の形態・大きさの変化がないか頻回に心エコーでフォローを行った。血腫は術後数日後より縮小傾向となり、術後3週間で心エコー上はほぼ消失し、IVSHによる重篤な合併症なく退院となった。【考察】IVSHは血腫の局在や大きさによっては様々な不整脈(AVB, VT, JETなど)やLVOTSを引き起こし、循環破綻を来す場合もある。血行動態が不安定な場合、外科的に血腫ドレナージを行ったという報告もある。IVSHの原因として文献的には、septal perforating artery(SPA)の術中損傷の可能性が示唆されている。自験例では術直後の心電図で、前胸部誘導でST上昇を認めており冠動脈が関連していた可能性はある。幸い血腫は術後数日から縮小傾向となり、報告されているような循環破綻は来すことなく経過できた。【結語】非常に稀なIVSHの合併症例を経験したが、慎重な管理を行うことで良好な経過を示した。