第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラル(II)50(P50)
術後遠隔期・合併症・発達7

指定討論者:木村 成卓(慶應義塾大学 外科(心臓血管))

[P50-5] リンパ管造影/胸管破砕術にて治療し得た房室中隔欠損術後の遷延性乳糜胸の一例

石川 悟1, 山本 真由2, 蘆田 浩一3, 古河 賢太郎1, 森 琢磨1, 飯島 正紀1, 安藤 達也1, 藤原 優子4 (1.東京慈恵会医科大学 小児科学講座, 2.帝京大学 放射線科, 3.東京慈恵会医科大学 放射線科学講座, 4.町田市民病院 小児科)

キーワード:乳糜胸, リンパ管造影, 先天性心疾患術後

【背景】先天性心疾患術後に合併した乳糜胸に対して、脂質制限、絶飲食をはじめとする内科的治療が第一選択として行われることが多いが、治療に難渋する症例も経験する。近年、内科治療抵抗性の乳糜胸に対しリンパ管造影/胸管破砕術の有効報告が散見される。内科的治療抵抗性乳糜胸に対しリンパ管造影/胸管破砕術にて軽快した症例を経験した。【症例】21trisomy、完全房室中隔欠損の9ヶ月男児。7ヶ月時に心内修復術を施行した。術後経過は良好であり、内服加療のみで経過観察中であった。肺炎を契機に心不全が増悪、両側乳糜胸が出現し、中鎖脂肪酸ミルク、オクトレオチド、プレドニゾロンによる治療を開始するも改善が得られず、絶飲食、中心静脈栄養も併用した。しかし、乳糜胸に対して治療を開始し1ヶ月を経過するも十分な治療効果が得られず、リンパ管シンチグラフィを施行したところpulmonary lymphatic perfusion syndrome(PLPS)及び乳糜胸が疑われたためリンパ管造影/胸管破砕術の適応と判断、施行した。術後1日目より乳糜胸は減少し、同日ドレーンを抜去。術後6日目より中鎖脂肪酸ミルク、術後10日目より一般乳を開始した。その後も乳糜胸の再燃やその他明らかな合併症なく経過した。【考察】乳糜胸の治療は長期間の絶飲食を必要とすることが多く、結果的に先天性心疾患術後患者の栄養不良、体重増加不良を来すことになる。リンパ管造影/胸管破砕術は、内科的治療に難渋する症例に対し、早期に治療効果が得られる可能性があり、術後患者におけるメリットも大きい。またリンパ管に対する治療戦略を考える上で、事前の病態把握は重要である。今後症例が蓄積されることで、より適切な治療方法や介入時期が明らかになると思われる。【結語】内科的治療に難渋した乳糜胸に対して、リンパ管造影/胸管破砕術を行い速やかに治療効果が得られた一例を経験した。