The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラル(II)60(P60)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患3

指定討論者:柴田 映道(慶應義塾大学医学部 小児科)

[P60-2] 高度摂食障害によるビタミン欠乏から肺高血圧に至った男児

福田 淳奈, 河合 駿, 水野 雄太, 池川 健, 杉山 隆朗, 若宮 卓也, 小野 普, 金 基成, 柳 貞光, 上田 秀明 (神奈川県立こども医療センター循環器内科)

Keywords:肺高血圧, 摂食障害, ビタミン

【背景】肺動脈性肺高血圧症(PAH)の原因としてビタミン欠乏に伴うものが報告されている。その中で脚気心と言われるビタミンB1 欠乏によるものが有名だがビタミンC欠乏も肺高血圧症の原因となることが報告されている。我々は高度摂食障害に伴うビタミン欠乏に伴うPAHの男児を経験したので報告する。【症例】7歳男児、精神発達遅滞の既往があり高度の摂食障害を認めていた。1週間前からの呼吸障害のため前医受診し肺高血圧が疑われ当院に転院搬送された。当院到着時の心エコーでは右室が左室を圧排し、severe TR、Act/Et 0.28と著名なPAHを認めた。純酸素での人工呼吸管理と血管作動薬では酸素化・血圧を維持できず一酸化窒素(NO) 吸入を開始した。直後から酸素化・血圧は著明に改善し、心エコーでは左室の圧排像は消失した。白米、鮭フレーク、納豆、水のみの偏食の既往からビタミン不足によるPAHを疑い各種ビタミンの補充を開始した。入院翌日からSildenafil内服を開始しNOは漸減中止した。入院5日目に抜管、11日目にICUを退室した。入院時の検体でビタミンCは感度未満、ビタミンB1は基準値未満であることを確認しSildenafil内服を中止した。退院前の心臓カテーテル検査でmean PA 19 mmHg、Rp 4.11 units×m2であった。【考察】脚気心によるPAHの機序には肺動脈血管の拡張による肺血流の増加、左室拡張末期圧の上昇が原因とされている。一方ビタミンCはNO合成経路に関与し、その欠乏によりPAHを来すと考えられている。PAHの鑑別として摂食障害の既往のある症例ではビタミン欠乏による肺動脈性肺高血圧症を鑑別に上げる必要がある。