The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラル(II)60(P60)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患3

指定討論者:柴田 映道(慶應義塾大学医学部 小児科)

[P60-4] キャリーオーバーした特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症の臨床的特徴

中山 智孝1,2, 高月 晋一2, 判治 由律香2, 川合 玲子2, 松裏 裕行2 (1.高知大学医学部付属病院 小児科, 2.東邦大学医療センター大森病院 小児科)

Keywords:肺動脈性肺高血圧症, 長期予後, 移行期医療

<背景>小児期発症の特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(I/HPAH)は生命予後改善に伴い成人に至る症例が増加している。<目的>長期生存している小児期発症I/HPAHのキャリーオーバー症例の特徴を明らかにすること。<方法>小児期発症I/HPAH症例のうち、5年以上定期観察し16歳以上に達した32例について、直近に行われた肺血行動態を中心に患者特性を調査した。<結果>初診時年齢は11.8(4.6-19.7)歳、女15:男17、遺伝性は8例(25%)。2005年以前の初診が23例(72%)と多く、観察期間は14.5(6.5-19.9)年で、直近のカテ時年齢は25.4(17.7-34.9)歳。肺血管拡張薬の内訳は、PGI2持続静注が26例(うち6例が離脱)、ベラプロスト8例、セレキシパグ4例、PDE5阻害薬/sGC刺激薬が27/4例、エンドセリン受容体拮抗薬が28例で、全例が(逐次)併用療法を受け、27例(84%)が3剤併用中。直近の肺血行動態は、平均PA圧(MPAP)が52(18-93)mmHg、平均RA圧が5(1-9)mmHg、PVRIが12.6(1.8-32.4)Wood・m2、心係数が3.4(1.9-5.5)l/min/m2、PVR/SVRが0.7(0.1-1.32)で、酸素負荷反応性は半数でMPAPが10%以上低下したが、20%以上の有意な低下は2例のみ。MPAP<40 mmHgに達した症例は7例(22%)と少ないが全例、遺伝子変異や家族歴がなく、うち5例はPGI2持続静注が著効し離脱しえた。WHO/NYHA機能分類は29例(90%)がII度以下、3例がIII度(うち2例は肺移植登録)、就労状況はフルタイム15/パートタイム6/学生4/無職7(うち精神疾患1・発達障害3)。6分間歩行試験が行われた23例の歩行距離は605(416-790)mと良好だった。主たる診療科は過半数が小児科、8例(25%)が内科へ転科、5例(15%)が内科と併診中であった。<結論>小児期発症I/HPAHのキャリーオーバー症例は肺血管拡張薬の併用療法でもMPAPが十分低下していない症例が多いが、長期にわたって病状安定が得られていた。移行期医療については今後の課題である。