[P67-2] 手足口病流行期における川崎病の疫学的特徴
キーワード:川崎病, 手足口病, IVIG不応
【背景と目的】川崎病(KD)の発症には様々な微生物が関与していると報告されており、手足口病やヘルパンギーナの原因であるエンテロウイルスも、KD発症との関連が疑われている病原微生物である。一方で、エンテロウイルス感染症流行期にKDを発症した症例の臨床的特徴は不明であるため、我々は手足口病(HFMD)流行期に発症したKD症例の臨床的特徴について検討した。【方法】2010~2014年に北九州市でKDと診断され免疫グロブリン大量療法(IVIG)により治療した715例を対象として、同期間の定点あたりのHFMD発症数とKD発症数、IVIG不応例数、冠動脈病変(CAA)合併数の関連について後方視的に検討した。【結果】調査期間中のHFMD患者の流行のピークは、2012年以外のすべての年で7月に認められた。2012年は年間を通して流行の兆しを認めなかった。各年7月の定点当たりのHFMD患者数は、2011年(107.26人)≫2013年(38.59人)>2014年(19.92人)>2010年(16.55人)>2012年(0.51人)であり、2011年7月にはHFMD大流行があった。一方、KD患者数は、冬季(12~1月頃)に多くなり、夏季(7~9月頃)に少なくなっていたが、2011年のみは8月の患者数が年間最多であり、2011年7月のHFMD大流行直後にKD患者数が著しく増加していた。各年8月のKD患児のIVIG不応例の割合は、2012年(75%)>2014年(36.4%)>2010年(28.6%)>2013年(11.1%)>2011年(5.3%)であり、HFMD患者数と逆相関していた。CAA発症率とHFMD患者数の関連はなかった。【考察】HFMD患者数が著しく増加した直後にKD患者数が増加しており、KD発症にエンテロウイルスが関与している可能性があることが示唆された。一方、我々の過去の検討では夏に発症したKD患者ではIVIG不応率が高かったが、HFMD流行後に発症したKD患者ではIVIG不応率が低く、エンテロウイルスがIVIG反応性にも関与している可能性があることが示唆された。