The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラル(II)70(P70)
川崎病・冠動脈・血管6

指定討論者:上砂 光裕(日本医科大学多摩永山病院 小児科)

[P70-4] 当院で経験した先天性冠動脈異常の2例(左冠動脈右室瘻とBWG症候群)

元永 貴大, 石川 雄一 (山口県済生会下関総合病院 小児科)

Keywords:先天性冠動脈異常, 冠動脈瘻, BWG症候群

【背景】先天性心疾患の中で冠動脈瘻の発症率は0.2-0.4%, BWG症候群の発症率は0.25-0.5%と共に稀な疾患である. 冠動脈瘻の75%は偶然発見され, ほとんどは臨床的に無害とされる. 一方, BWG症候群の臨床症状と予後は側副血行路の発達に左右され, 生後早期に死亡する例と無症状で経過する成人例に分類される. この度, 左冠動脈右室瘻とBWG症候群の2例を経験したので報告する. 【症例1】4歳の男児. 感冒で受診した際に心雑音を指摘された. 超音波検査で左室拡大, 左冠動脈拡大, 右室内へ流入する異常血管を認めた. 造影CTで左冠動脈から右室への連続を確認し左冠動脈右室瘻と診断した. 心機能, 12誘導心電図, ホルター心電図は正常であり経過観察中である.【症例2】2か月の女児. 発熱を主訴に入院した際に収縮期雑音と心拡大を認めた. 超音波検査では左室・左房拡大, 僧帽弁逆流ジェット, 心室レベルで複数の左右シャント血流, 左冠動脈から肺動脈へ流入する異常血管を認め, 僧帽弁閉鎖不全 (MR)3度, 僧帽弁逸脱, 多孔性心室中隔欠損 (筋性部), 左冠動脈肺動脈瘻と診断した. 左房左室の容量負荷に対し利尿剤とACE阻害剤を開始した. 4か月時の超音波検査で心室中隔内や心室周囲に側副血行路を示唆する異常血流や右冠動脈拡大を認め冠動脈異常を疑った. 造影CTで左冠動脈が肺動脈本幹から起始しておりBWG症候群と診断した. 他院で冠動脈移植術, 僧帽弁形成術が施行され, 術後経過良好である. 【考察】症例2は心収縮能正常で, 左冠動脈(実際は心膜横洞)が大動脈から起始するように見えたため当初は冠動脈瘻と考えた症例であった. 成長に伴い側副血行路が発達したことで異常血流からBWG症候群を疑った. 既報告でも, 心室中隔内, 右室壁内の櫛の歯状の異常血流シグナルはBWG症候群に対し診断精度が高いと言われている. 突然死リスクのある疾患であり, 出生早期の左室拡大, MR症例では本疾患を疑い早期の診断治療が重要である.