The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラル(II)70(P70)
川崎病・冠動脈・血管6

指定討論者:上砂 光裕(日本医科大学多摩永山病院 小児科)

[P70-5] 壁内走行の診断が治療するうえで重要と考えられた単一冠動脈右肺動脈起始症の1例

福島 直哉1,2, 吉村 幸浩3, 平野 暁教3, 山本 裕介3, 野間 美緒3, 前田 潤1, 三浦 大1 (1.東京都立小児総合医療センター 循環器科, 2.平塚市民病院 小児科, 3.東京都立小児総合医療センター 心臓血管外科)

Keywords:単一冠動脈右肺動脈起始症, 壁内走行, 心臓超音波検査

<背景> 単一冠動脈右肺動脈起始症はこれまで7例の報告があり, 5例で外科的介入が行われ, 1例のみが生存している. 症例の希少性から特徴や外科的介入における統一された見解はない. 同疾患の一例を経験し, その診断・治療から得た知見を報告する. <経過> 1か月男児, 1週間前から気道症状があり, 呼吸不全のため人工呼吸器管理となった. 胸部レントゲンで心拡大所見, 心臓超音波検査で心機能低下 (左室駆出率 13%), 乳頭筋輝度上昇, 僧帽弁閉鎖不全を中等度認めた. 新生児心筋炎の可能性に対し免疫グロブリン静注療法を実施したが改善を認めず. 心臓超音波検査の再検で右冠動脈左冠動脈起始および壁内走行を疑ったが, 左冠動脈は左冠尖から正常に起始するように描出され順行性の血流を認めたため, 拡張型心筋症と診断しカルベジロール内服を開始した. 入院27日目, 啼泣をきっかけに心室細動を認め, 電気的除細動により洞調律に復帰した. 心臓カテーテル検査を行い単一冠動脈右肺動脈起始症と診断した. 入院37日目, 冠動脈移植術の方針で外科的介入に臨み, 術中に単一冠動脈主幹部が壁内走行していることが判明. 同部を剥離中に右冠動脈への分岐部付近を損傷, その修復と移植術を実施したが, 右冠動脈の閉塞を来した. 心機能の回復は見られず心不全が徐々に進行し, 入院132日目に永眠した. <考察> 本疾患と類似した冠動脈起始異常である左冠動脈右肺動脈起始症の最近の報告では, 60~80%の症例で左冠動脈主幹部の大動脈壁内走行が見られ, 良好な術後成績が収められている. 本症例でも心臓超音波検査画像を後方視的に検討し, 壁内走行と診断し得る所見が確認された. 冠動脈の壁内走行を術前に診断することは, 冠動脈起始異常の手術方針に関わるため, 術前の心臓超音波やCTでの画像検査で特に留意する必要がある.