[P73-1] 院外心停止をきたした就学期患者に対する社会復帰を目指した治療戦略
キーワード:学校検診, 院外心停止, 機械的循環補助
【背景】院外心停止症例に対しては,非医療従事者による病院前救護から,病院到着後の早急な機械的循環補助を含む全身管理まで,一連の「救命の連鎖」が重要であるが,就学期児童において合併症なく社会復帰するための治療指針については明確なものはない.【目的】当院における就学期児童の院外心停止症例に対する治療・予後を検討すること.【方法】2014年1月から2019年12までに院外心停止を来し当院へ搬送となった就学期児童5例について後方視的に検討した.【結果】年齢は11.5(9-14)才.男児3名,女児2名.身長 146(100-160) cm,体重 45(28-50)kgであり,全例で基礎疾患は指摘されていなかった.4例でバイスタンダーによる心肺蘇生がなされたが,全例で病院到着時に自己心拍再開はなく,大腿動静脈から経皮的心肺補助(PCPS)を確立した.救急隊覚知からPCPS開始までは 57(25-100) 分であった.うち4例で不十分な心肺負荷軽減のために,Bridge To Decisionとしての両心補助(BVAD)へ移行した.死亡は2例で,1例はバイスタンダーによる心肺蘇生がなく,低酸素脳症により脳死判定を受けた.もう1例は両股関節離断,BVAD装着後に広範囲脳梗塞による脳ヘルニアにより死亡した.生存した3例は全例自宅退院を果たしており,うち2例は機械的補助循環を離脱し,残る1例は植込み型左室補助人工心臓装着後に心移植に到達した.下肢離断を要したのは2例で,PCPSからBVADへの移行へ要した時間はそれぞれ27,46時間であり,下肢離断を免れた3例では4(3-6)時間であった.最終診断は劇症型心筋炎2例,拡張型心筋症疑い2例,特発性心室細動1例であった.【まとめ】PCPSは病院到着後初期循環補助として有用であるが,Bridge To DecisionとしてのVAD移行を躊躇なく早期に行うことが,心機能改善や下肢救済に寄与し,社会復帰率向上へつながると考えられる.