The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

その他

デジタルオーラル(II)77(P77)
その他2

指定討論者:豊野 学朋(秋田大学 小児科)

[P77-2] 開胸術後の乳糜胸にミドドリン塩酸塩投与が効果があった一例

妹尾 祥平, 住友 直文, 小柳 喬幸, 古道 一樹, 山岸 敬幸 (慶應義塾大学 医学部 小児科)

Keywords:乳糜胸, ミドドリン塩酸塩, 選択的α1受容体刺激薬

【背景】開胸術後の合併症に乳糜胸があり、多量の乳糜胸水は呼吸障害、低蛋白血症、リンパ球減少をきたし致死的となるため、早期の治療介入が必要となる。治療はまずは保存的治療を行う。保存的治療の基本は絶食、完全静脈栄養(TPN)であり、効果不十分の場合にはステロイド、オクトレオチドの投与を行う。保存的治療でも症状が改善しない場合は外科的治療の適応とされている。一方で、近年、乳糜胸の治療に選択的α1受容体刺激薬が有効であるとの報告がある。今回私達はNoonan症候群の新生児が大動脈縮窄症術後に多量の乳糜胸をきたし、絶食、ステロイド、オクトレオチドの投与でも改善せず、外科的治療の待機期間に、ミドドリン塩酸塩の投与を行い、乳糜胸が改善した一例を経験したので報告する。【症例】在胎35週、体重2494gで出生したNoonan症候群の女児。大動脈縮窄症のため日齢4に大動脈形成術を実施した。術中に肺出血があり、人工心肺が離脱できず、ECMO管理となった。術後6日でECMOを離脱、術後9日で閉胸術を実施した。閉胸術後も胸腔ドレーンから500ml/日以上の胸水の漏出を認め、胸水の性状から乳糜胸と診断した。絶食、TPN管理、ステロイド、オクトレオチド、第13因子製剤投与を行なったが、改善はなかった。外科的治療が必要と判断し、各種検査を進めつつ、手術まで待機としていた。待機に期間を要したため、ミドドリン塩酸塩内服を開始した。内服開始7日後から徐々に乳糜胸水が減少し、20日後には消失したため、胸腔ドレーンを抜去した。その後も乳糜胸の再発なく経過し、外科的治療を回避することができた。【考察】今回ミドドリン塩酸塩投与の効果があったと考えられた開胸術後の乳糜胸症例を経験した。絶食、TPNなどの一般的な内科的治療で改善が見られない場合は外科的治療を考慮しつつ、ミドドリン塩酸塩投与を行うことも治療の選択肢となりうると考えられた。