[P82-3] 心房中隔欠損閉鎖術後遠隔期に下大静脈左房流入による心不全を発症し、心房内血流転換術を施行した1例
キーワード:下大静脈左房流入, チアノーゼ, 心房中隔欠損
【背景】下大静脈左房流入は極めて稀な奇形である。ASD合併例では左房流入血が欠損孔を通り右房に流れるためチアノーゼを示さない例もある。今回小児期ASD閉鎖術後50年という遠隔期に心不全症状を認め、心房内血流転換術を施行した症例を経験した。【症例】60歳、男性。10歳時他県でASD閉鎖術を受け1年間フォローされたがその後受診なし。40歳から多血症のため抗凝固療法開始、52歳時に脳梗塞を発症したがADLは自立していた。55歳から労作時呼吸困難と下腿浮腫を自覚、59歳から両下腿鬱滞性皮膚炎に対して加療開始された。近医で著明な低酸素血症を指摘され前医受診、下大静脈還流異常と診断され在宅酸素開始、手術目的に当科紹介となった。理学所見は身長169cm、体重76kg、BP:98/54mmHg, SpO2:79%、検査所見はHb:16.3 g/dL, BNP: 215pg/mL, 肝腎機能正常、心電図: HR 80bpm, Af, CXp: CTR 50%, 鬱血所見なし、心エコー:LVEF 63%, LVDd/s: 59/52mm, IVC 6/10mm, AR(-), PR(2), MR(1), TR(1), TR-PG:13mmHg、心臓カテーテル検査でIVCから左房への血流を認め、Qp/Qs: 0.39であった。【手術】胸骨正中切開、上行大動脈送血、右大腿静脈+SVC脱血で人工心肺確立、上行遮断、順行性心筋保護液で心停止を得た。右房内は卵円窩頭側に縫合糸認め、心房中隔欠損は認めず、IVC開口部は認めなかった。心房中隔を切開し左房内にIVC開口部を認めバルーンで閉鎖、PTFEパッチでIVCを右房に誘導しながら心房中隔を形成した。術後はSpO2>95%、経過良好で術後17日目に退院した。【考察】下大静脈左房流入は稀な疾患で発生率は不明だが報告では成人症例が多い。今回の症例は先天性とも考えられるが、ASD術後であり医原性の可能性も考えられた。脳梗塞について多血症の関与が否定できず、QOLの観点からも早期診断が重要である。【結語】1. ASD閉鎖時にはIVCの位置を必ず確認する。2. 原因不明の低酸素血症をみた際は本疾患も鑑別に入れる。