第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(II)83(P83)
外科治療5

指定討論者:萩野 生男(千葉県こども病院)

[P83-3] Glenn手術でAdditional Pulmonary Blood Flowは有益である

杉野 充伸1, 森田 理沙1, 浦山 耕太郎1, 田原 昌博1, 山田 和紀2 (1.あかね会土谷総合病院 小児科, 2.あかね会土谷総合病院 心臓血管外科)

キーワード:Glenn, additional pulmonary blood flow, PA-index

【背景】Glenn手術(以下BDG)は単心室循環における中間ステージの姑息術となる。nativeな順行性肺血流が存在する症例に対して、当院では肺血管の成長を期待しBDGでAdditional Pulmonary Blood Flow(以下APBF)を積極的に残す治療戦略をとっている。【方法】2000年から2019年までにBDGを施行した32例について診療録をもとに後方視的に検討した。APBFあり24例(以下A群)、APBFなし8例(以下B群)であった。【結果】BDG後のPA圧(10±2.5VS8.3±2.4)、Qp(3.1±0.8VS2.9±2.2)、SaO2(88.3±4.1VS81.6±6.5)はそれぞれA群で高く(p<0.05)、またTCPC後のPA-index(260±105VS171±44.7)もA群で有意に高かった(p<0.05)。BDG後のICU滞在日数(6.3±6.7VS7.4±3.8)はA群で有意に低かった(p<0.05)。周術期(BDG)の循環不全、不整脈、胸水、死亡率は両群で有意差を認めなかった。BDG後の体肺動脈側副血管はA群B群それぞれ74%VS86%で、体静脈側副血管は32%VS14%だったが、二群間で有意差を認めなかった。肺動静脈瘻は両群とも認めなかった。BDG後の心機能や房室弁逆流も両群で有意差を認めなった。【結論】TCPC後のPA-indexはA群で有意に高く、これはAPBFによる拍動血流が肺血管の成長をさらに促すことを示す。APBFによる拍動血流は肺動脈内に存在する血管内皮由来のNOやエンドセリン1を放出させ、ずり応力を軽減する。またAPBFを残すことで将来的な肺動静脈瘻の形成を抑制する報告がある。さらにSaO2の上昇は幼児期の神経学的な発達にとって好ましい。適切なAPBFは心室への容量負荷による心機能および房室弁逆流の悪化にはつながらない。BDGで積極的にAPBFを残すべきである。