[P86-2] 左室低形成を合併した上心臓型総肺静脈還流異常症に対して段階的治療により二心室修復に到達した1例
Keywords:左心低形成, 総肺静脈還流異常症, バルーン
【症例】1歳8か月男児。出生後チアノーゼ(SpO2=80%)のため当院へ救急搬送された。体重2935g。心エコーで左室低形成、大動脈弁および弁下部狭窄、卵円孔開存、総肺静脈還流異常上心臓型、動脈管開存症と診断した。左室拡張末期径=4.6mm(30%対正常)、左室駆出率=72%、大動脈弁輪径=5.6mm(89%対正常)、僧帽弁輪径=8.0mm(67%対正常)、垂直静脈血流速度=1.0m/secだった。動脈管依存性体循環のためプロスタグランジン(PGE1)を投与した。日齢1に窒素療法、日齢2に両側肺動脈絞扼術、総肺静脈還流異常修復術、心房中隔欠損拡大術を実施した。術後動脈管狭小化による下肢血圧低下所見があり、PGE1を継続した。生後2か月の心臓カテーテル検査で左室拡張末期容積=5.9ml(82%対正常)、左室駆出率=51%、左室圧=65/7mmHg、上行大動脈圧=75/34(51)mmHg、動脈管閉鎖試験では肺動脈圧=100/25(53)mmHg、右上肢動脈圧=84/53(59)mmHgであり二心室修復を目指す方針とした。生後3か月に両側肺動脈絞扼部に対する経皮的血管形成術を実施した。右・左肺動脈絞扼部(径2.0, 2.8mm)に対してそれぞれSHIDEN® 5×20mmを用いて24気圧で拡張した。主肺動脈圧=81/34(53)から58/23(37)mmHgへ低下し、大腿動脈圧=87/24(48)mmHgへ上昇した。Qp/Qs=0.76から4.13へ増加し、PGE1を中止し退院した。生後10か月の心臓カテ―テル検査でQp/Qs=2.8、右肺動脈圧=43/23(32)、左肺動脈圧=53/26(36)、肺血管抵抗(Rp)=4.7 Wood Unitだった。酸素負荷試験によりRp=0.5に低下することを確認し、心房中隔欠損閉鎖術・動脈管結紮手術を実施した。術後心臓カテーテル検査で左肺動脈圧=45/16(28)mmHgと軽度肺高血圧が残存し在宅酸素投与を継続した。【考察】形態的に当初二心室修復困難と考えたが、総肺静脈還流異常術後に左室増大が得られ、カテーテルインターベンションを併用して段階的に二心室修復へ到達できた。