The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

デジタルオーラル多領域専門職部門(I)03(TRO03)

指定討論者:田中 美奈子(京都府立医科大学 小児医療センター)

[TRO03-3] 難手術を受ける先天性心疾患児への最善の関わりについて悩む母に介入した一例

服部 佳世子, 樋口 靖子, 井林 寿恵 (京都府立医科大学 小児医療センター)

Keywords:先天性心疾患, 代理意思決定, 母子分離不安


【背景】重症先天性心疾患児をもつ母は健康児の母と比べ、不安を抱き溺愛しやすい傾向があり、情緒不安定傾向も強いことが明らかにされている。今回、難手術目的に入院した児への最善の関わりについて悩む母に介入した事例について看護記録を振返り報告する。
【事例紹介】患児はDORV、PAに対し、他院で1歳時にグレン手術を行った5歳児。児は術後の血行動態からフォンタン手術が難しく、セカンドオピニオンで本院に入院し3ヶ月の内科的治療後手術が可能となった。
【倫理的配慮】母子の同意と看護部承認を得た。
【介入】母は児のために手術を希望しているが、児の負担や手術による命への不安が強く、代理意思決定を行っている迷いからも児に最善を尽くしたいと強く思っていた。入院時処置に対する恐怖心が強い児に、母は無力感を感じていた。そのため母が前向きに児に関われるよう母と共にプレパレーションを行い、処置後に母と児が頑張りを共有できるようにした。母が関わることで児は処置に主体的に臨めるようになった。さらに恐怖心や母子分離不安が強い児が、術後の流れを聞くことで手術を怖がることを母は懸念していた。母が思うより児は成長していること、説明しない方が混乱を招き、真実を聞けなかったことで母子関係に影響が及ぶ可能性があること、説明し手術を乗り越えることで児が治療に対する肯定感、自己効力感を得ることを伝え、児への説明が実現した。結果、児は頑張る意思をみせ手術に向かうことができた。さらに児は術後の苦痛を伴う処置も主体的に乗り越えることができた。
【考察、結語】看護師が母に期待することを伝え、母と共に児に介入することで、母が前向きに児に関わることができた。母自身の手術への不安や児への先入観があると冷静な判断がくだせない時がある。児の理解度や適応力を客観的に評価し、術後や退院後の児の自律性をも念頭に置いて母と共に介入方法を検討することが重要である。