[I-SY03-2] LVAD離脱後に治療に苦慮した慢性心筋炎の1例
キーワード:慢性心筋炎, LVAD, PSL
【背景】慢性心筋炎とは数か月間以上持続する心筋炎をいう。ESCでは、持続的炎症に関連した拡張型心筋症について、組織所見とあわせて炎症性拡張型心筋症(inflammatory dilated cardiomyopathy)として定義しているが、病因や診断については確立されていない。今回我々は、LVAD離脱が可能であった慢性心筋炎の症例を経験したので報告する。【症例】11歳女児で生来健康であった。家人によるCPR後、近医搬送。心拍動再開となるが、その後VfとなりDCを数回実施された。それぞれのPeak値はBNP 298 pg/mL、CK-MB 1457 ng/mL、トロポニンI 2585 pg/mLであった。心エコーでLVEF 13.4%、LVDd/Ds 40.9/38.5 mm(97 % of Normal)と低心機能を認めたためPeripheral ECMOが導入され、当院転院。発症7日目にNipro VADを装着した。病初期の心筋ウイルスPCR検査は陰性であったが、LVAD装着後に大量IVIgを3度実施した。その効果は明らかではなかったが、LVAD装着後に心機能は改善傾向となり、装着後4か月目に離脱した。離脱後の心機能は安定していたが、心筋生検ではリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤および細胞障害像が遷延し、間質の線維化は進行した。LVEF 50 %と心機能は安定していたが、発症10か月目にトロポニンIの再上昇を認めたため、PSLの内服を開始。PSL投与後は、速やかにトロポニンIの改善を得ている。【考察】初期心筋病理のウイルスPCRは陰性であったが、心筋へのリンパ球浸潤が半年以上続く症例を経験した。合計5回の心筋病理検査の結果、慢性心筋炎と診断した。これまでに諸家からPSLやAZT、CNIの投与により、生存率やLVEFの改善が見られたとの報告があるが、病因や診断については確立されていない。【結語】慢性心筋炎の病態・予後については未だ不明な点が多く、診断・VAD離脱の可否を含めた治療判断も非常に難しく、今後の症例の蓄積が必要である。