[I-SY05-2] 先天性心疾患における心不全指標としての赤血球分布幅、血小板分布幅
キーワード:心不全, 先天性心疾患, 血算
【背景】血液中の血球成分は栄養状態と臓器間に作用するホルモンのバランスによって調整を受け、赤血球分布幅は心不全の、血小板分布幅は末梢血管障害のサロゲートマーカーである。しかし小児先天性心疾患のような多様な病態を包含する疾患群における臨床的意義については明らかでない。【対象と方法】156例の非フォンタン循環の慢性期先天性心疾患児に対して施行した心臓カテーテル検査データと術前に評価したRDW、PDWの関連を解析した。【結果】RDWは年齢とともに低下する傾向があったが、PDWは特定の傾向は認めなかった。RDW、PDWともに年齢の影響を調整しても無短絡疾患、チアノーゼ性疾患、高肺血流性疾患で差はなかった。RDW、PDWともに心拍出係数、拡張末期圧、実効動脈エラスタンス、大動脈キャパシタンス、収縮期末エラスタンス、体血管抵抗とは関連を認めなかったが、RDWはHANP(p=0.040)、BNP(p=0.038)、NT-pro BNP/BNP比(p<0.0001)、左室拡張末期容積% (p=0.020)と正相関を認めた。RDW、PDWはともに中心静脈圧(p=0.028, p=0.002)、肝静脈楔入圧(p=0.031, p=0.0020)と正相関を認め、総ビリルビンやγGTPと相関する傾向があったことから、いずれも臓器うっ血に伴う病態を反映する指標と考えられた。RDWはヘモグロビン値に影響を受けなかったが、血清フェリチンと負相関、TIBCおよびUIBCと正相関することから相対的鉄欠乏状態と心負荷の関連を示唆するものと考えられる一方、PDWは血清フェリチン(p=0.039)、Fib-4 index (p<0.001)と正相関、アルブミン-IgG比 (p=0.014)と負相関とを示し、うっ血に伴う肝臓障害を特異的に示す可能性があると考えられた。【結論】RDW、PDWは先天性心疾患においても心不全病態のサロゲートマーカーとなりうる。