第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム06(I-SY06)
合併先天異常を有する心疾患患児の集中治療

2021年7月9日(金) 15:10 〜 16:40 Track4 (Web開催会場)

座長:長谷川 智巳(兵庫県立こども病院 小児集中治療科)
座長:和田 直樹(榊原記念病院 心臓外科)

[I-SY06-1] 消化管穿孔を合併した先天性心疾患の検討

門屋 卓己1, 江原 英治1, 森 秀洋1, 丸山 和歌子1, 中村 香絵1, 佐々木 赳1, 藤野 光洋1, 川崎 有希1, 吉田 葉子2, 鈴木 敏嗣2, 西垣 恭一3 (1.大阪市立総合医療センター 小児医療センター 小児循環器内科, 2.大阪市立総合医療センター 小児医療センター 小児不整脈科, 3.大阪市立総合医療センター 小児医療センター 小児心臓血管外科)

キーワード:消化管穿孔, 先天性心疾患, 腸管壊死

【背景】先天性心疾患(CHD)は,腸管壊死のリスクが高く消化管穿孔を発症すると重症化する.腸管壊死の機序は十分解明されていないが,近年未熟児の壊死性腸炎(NEC)とCHDに伴う腸管壊死は機序が異なる可能性があり,個別の疾患として捉える必要があると報告されている.【目的】消化管穿孔を合併したCHDの臨床的特徴を検討し病態を考察する.【対象と方法】当院で2010-2020年に消化管穿孔を発症し人工肛門を造設したCHD6例について後方視的に検討した.CHDの診断,消化管穿孔発症時の月齢とCHDに対する手術介入状況,血行動態,栄養状況,腸管の病変部位,転帰,入院期間について検討した.在胎週数30週未満,PDA単独,染色体異常例は除外した.【結果】CHDの診断は,右室型単心室2例, TA,HLHS,AS+CoA,AS+VSD各1例であった.消化管穿孔発症の年齢は日齢1-5歳(中央値日齢18), CHDの手術介入状況は未介入2例,BT shunt,PAB+PDA ligation,CoA repair+PAB,Modified Konno各1例であった.血行動態は全例がLOSまたは高肺血流の状態でうちPDA開存が2例(PGE1使用)あった.SpO2は80-95%(中央値89%)で,発症前絶食例はなかった.病変部位は大腸病変を含む症例が5例(4例は右側結腸), 1例は小腸病変であった.転帰は生存4例,死亡2例で3例が短腸症候群を呈した.生存例の消化管穿孔発症後の入院期間は7-20か月(中央値12か月)であった(入院中の1例除く).【考察】全例でLOSまたは高肺血流の状態であった.6例中5例で大腸病変があり, 小腸壊死が多い未熟児NECと異なる様相を呈した.右側結腸は腸間膜動脈分枝の辺縁動脈の形成不全や直細動脈の走行が長く, 側副血行が乏しいことが報告されており, 虚血や低酸素に対して脆弱である可能性がある.経腸栄養は腸管血流の需要を増大させるため, ハイリスク例では注意が必要である.【結論】CHDに伴う消化管穿孔は虚血が関与し, 未熟児NECと異なる病態や特徴を持つ可能性が示唆された.