[I-YB01-4] SARS-CoV-2感染後に発症したmultisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C)の日本人女児の一例 ―71種の血中サイトカイン解析を含めてー
キーワード:multisystem inflammatory syndrome in children, COVID-19, 川崎病
【緒言】MIS-CはCoronavirus disease 2019 (COVID-19)に関連し、川崎病(KD)類似の症状を呈する小児の重症例として欧米から報告されている。KDと比較し発症年齢が高い、消化器症状が多い、循環不全や集中治療管理の頻度が高い等の特徴がありアジアからの報告は稀である。本邦初の典型的な経過のMIS-C症例を経験し71種のサイトカインの経時的変化を追跡したので報告する。【症例】日本人の9歳女児。家族内感染でCOVID-19に罹患し無症状で30日間経過後、発熱、右頸部腫脹と疼痛、腹痛、嘔吐が出現し、第3病日に入院した。発熱、右頸部リンパ節腫脹、口唇発赤を認めた。鼻腔ぬぐい液によるFilmarrayにてSARS-CoV-2のみが検出された。血液検査で好中球数の上昇、CRP値上昇を認めた。抗菌薬では軽快せず、各種培養検査も有意な起炎菌を認めなかった。第5病日にKD主要6症状を認め、同時にWHOのMIS-C診断基準を満たしKD及びMIS-Cと診断した。診断時は心機能良好で、心電図異常もなかった。同日KDに対してIVIG、ASA、PSLの投与を開始し、速やかに解熱した。第6病日、心臓超音波で左室収縮能の低下、心嚢水貯留、両側房室弁逆流が出現し、心電図で広範なST-T上昇がみられた。さらにトロポニンI値とBNP値の上昇を認め、急性心筋炎と診断した。利尿薬と血管拡張薬を投与し、心機能は速やかに改善した。以降は症状の再燃なく経過し、第20病日に退院した。経過中に冠動脈拡大はなかった。BioPlex 3Dシステムを用いて、第2病日から第19病日までの71種類のサイトカインを経時的に測定し、解析した。IL-6、IL-8、IL-10、IL-17は臨床症状の悪化に伴い上昇し、IVIG+PSL投与後に解熱したタイミングで速やかに低下した。一方でIL-1RA、INFγ、MCP1、MIP3β等は、解熱時には低下が不十分で、心筋障害の改善とともに低下した。これらのサイトカイン動態については今後症例を蓄積し検討することでMIS-Cの病態解明や治療法の開発に有用と思われた。