[I-YB02-3] Shore硬度50Aの新素材を用いた立体心臓模型が手術シミュレーションに有用であった3症例
キーワード:立体心臓模型, 3Dプリンター, シミュレーション
【背景】当院では2018年以降、Formlabs社製の光造形法3Dプリンター「Form2」を用いて患者CT画像データから模型を作製し、臨床応用してきた。2020年からShore硬度50Aの柔軟性を持ち、半透明でシリコンのような質感が特徴である新素材の光硬化性樹脂「Elastic50Aレジン」を用いて立体心臓模型を作成している。この立体心臓模型を用い、手術シミュレーションとして有用であった3症例を経験したので報告する。【症例1】女児。AA、VSD、ASD、PDAと診断、日齢4でbi-PAB、日齢24にNorwood、RV-PA shunt(5mm)、0歳5か月時にRV-PA shunt exchange(6mm)を施行された。VSDとneoAoが離れた構造をしており、0歳11か月時に立体心臓模型を作成。心内構造の把握に有用で、1歳時にYasui手術を施行された。【症例2】男児。DORV(subaortic VSD)、CoA、subAS、PDA、retroaortic INNVと診断、日齢6でArch repair、PABを施行された。0歳8か月時に立体心臓模型を作成。VSDとAoの位置関係の把握、SAS releaseのシミュレーションに有用で、10カ月時に心内修復術を施行された。【症例3】男児。Dextrocardia、upstair-downstair heart、DORV、PA、ASD、RAAと診断、日齢28でlt.BT shunt、生後5か月でrt.BT shuntを施行された。0歳11か月時に立体心臓模型を作成。心内構造の把握と、rerouteと三尖弁の位置関係のシミュレーションに有用で、心内修復術を目指す方針とされた。【結語】従来我々はShore硬度80Aの黒色光硬化性樹脂を用いていたが、柔軟性がなく、また色調も黒色であり、形態把握には難があった。一方、Shore硬度50Aの「Elastic50Aレジン」は、任意の部位に容易に切開を行うことができ、半透明のため心血管の形態把握がしやすい。また比較的低価格かつ短期間で作成することができ、導入が容易であることが特徴である。今回の症例のように複雑ないし稀な心血管の形態把握や手術設計に有用と考えられる。