第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム07(II-SY07)
両側肺動脈絞扼(bPAB)からの二心室修復

2021年7月10日(土) 14:50 〜 16:50 Track2 (Web開催会場)

座長:大嶋 義博(兵庫県立こども病院 心臓血管外科)
座長:櫻井 一(JCHO中京病院 心臓血管外科)

[II-SY07-4] 境界型二心室症例および複雑二心室修復高リスク症例に対する両側肺動脈絞扼術

今井 健太1, 帆足 孝也1, 奥田 直樹1, 小森 元基1, 古谷 翼1, 安川 峻1, 中村 悠治1, 小野 譲数1, 黒嵜 健一2, 市川 肇1 (1.国立循環器病研究センター病院 小児心臓外科, 2.国立循環器病研究センター病院 小児循環器内科)

キーワード:両側肺動脈絞扼術, 境界型二心室, 複雑二心室修復

【目的】二心室修復適応疾患に対する、両側肺動脈絞扼術(bPAB)の成績について検討。【対象と方法】2012年から2020年にbPABを行われた、機能的単心室を除く16例。主診断は両大血管右室起始6例、大動脈弓離断/縮窄複合5例、大動脈弁狭窄2例、その他左心低形成複合、僧帽弁狭窄、総動脈幹症が各1例。女性は7例(44%)。2例(13%)が在胎37週未満。5例(31%)が染色体異常合併。7例(44%)が術前人工呼吸器管理。手術時日齢中央値7日(範囲、0-48)、体重2.7kg(1.3-3.3)。9例(56%)でductal stentを併施。bPABの適応は、術前状態の安定や新生児期複雑手技の回避を目的とした“bridge to repair”が11例、境界型二心室疾患に対する“bridge to decision”が5例。術後経過と以降の主要手術の成績を、特にbPAB適応毎に検討。【結果】人工心肺を用いた第二期手術までの期間は中央値156日(19-566)で待機中の死亡および主要合併症なし。第二期手術後3年での生存率は88±8%。再侵襲的治療回避率は33±14%。経過中の死亡は2例。bridge to repair群11例中9例が二心室修復に到達、術式は心室内ルーティング4例+大動脈弓修復(大血管スイッチ併施3例)、Yasui手術2例(Staged1例)、大動脈弓離断複合修復2例、大動脈弓修復+大動脈弁形成1例。大動脈弓離断合併両大血管右室起始の1例が術中心筋梗塞から心不全死。bridge to decision群5例中4例で二心室修復施行。二心室修復前のカテーテル検査において、左心系懸念の4例で、左房または肺動脈楔入圧は9-15mmHg、左室拡張末期容積正常比は92-144%。右心系懸念の1例で、二心室修復前の右室拡張末期圧は6mmHg、右室拡張末期容積正常比は157%。左心低形成複合の1例が術後肺うっ血を伴う僧帽弁閉鎖不全を来たし、単心室血行動態への移行手術を試みたが救命できず。【まとめ】高リスク群または境界型二心室疾患に対する、bPABを先行した段階的治療戦略は安全を担保できる有効な手段であると考えられた。