[II-SY08-5] Interpretation of Fontan physiology and consideration of treatment strategy based on computer simulation
Keywords:フォンタン, シミュレーション, 循環動態
【背景】フォンタン循環は肺循環に対して駆出する心室を欠く特殊な循環であるが、心拍出量・血圧を維持するための適応的な心血管特性として、心室・動脈・静脈のstiffnessの上昇、末梢血管抵抗の上昇などを認めることが知られている。また、フォンタン患者では、運動耐用能の低下および、心拍応答の異常や心血管反応の異常があることも知られている。これらの結果として起こる中心静脈圧(CVP)の上昇は、遠隔期には肝硬変などの合併症につながるため、運動時も安静時もできるだけCVPが低い状態でフォンタン循環を成立させることが理想的である。【方法】我々は、MATLABとSimulinkを用いて3要素ウィンドケッセルモデルと時変エラスタンスモデルに基づいた心血管シミュレーターを構築した。構築した心血管シミュレーターを用いて、どのようにすれば拍出量や血圧を保ちつつ、中心静脈圧の低いフォンタン循環を成立させることができるかについて検討した。【結果】シミュレーションにより、Fontan循環では循環を維持するための代償機転として 1. 静脈コンプライアンスの低下、2. 動脈抵抗(拍動、非拍動)の上昇があり、3. 心拍増加に対する予備能の低下を認めていることが予想された。それぞれの血管特性を変化させたときのCVPの変動範囲を計測したところ、特に静脈コンプライアンスの低下がCVP上昇に寄与していた。またシミュレーションにより、肝硬度を上昇させると、肝静脈波形が3相性から1相性に変化していくことが予想された。【考察】Fontan循環において、循環を維持するための代償機転は長期的にはMaladaptationとなりうる。静脈コンプライアンス上昇、後負荷低減、心泊数抑制などが長期的に有用である可能性が示唆された。また、肝静脈波形のパターンにより肝線維化をモニターできる可能性が示唆された。