第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション06(III-PD06)
Fontan循環のUp-to-date:新たな病態を探る

2021年7月11日(日) 10:00 〜 12:10 Track6 (現地会場)

座長:大内 秀雄(国立循環器病センター 小児科)
座長:中野 俊秀(福岡市立こども病院心臓血管外科)
コメンテーター: David J. Goldberg(Perelman School of Medicine at the University of Pennsylvania/Children’s Hospital of Philadelphia, USA)

[III-PD06-2] Fontan術後患者の扁桃体容積の増加

佐藤 理絵, 宗内 淳, 杉谷 雄一郎, 土井 大人, 古田 貴士, 小林 優, 江崎 大起, 渡辺 まみ江 (JCHO九州病院 小児科)

キーワード:フォンタン, 中枢神経, 発達

【目的】扁桃体は情動反応の処理と記憶において主要な役割を担う。Fontan術後患者は、生後から長期入院による家族との愛着形成不良や侵襲を伴う定期的な検査・治療のため身体的・精神的ストレスにさらされており扁桃体に影響を与える可能性がある。Fontan循環患者の扁桃体容積を健常小児と比較した。
【方法】Fontan術後群40人と正常対照群30人において、脳磁気共鳴画像法を使用して扁桃体容積を測定した。冠状断像で扁桃体と側頭頸部が灰白質と同等の大きさに見える部位を同定し水平断における測定部位の目安とした。次に水平断で視索、大脳脚、中脳被蓋などをメルクマールとして扁桃体をトレースした。扁桃体はアーモンド状の構造であることから楕円球として計算し、左右和を扁桃体容積として算出した。また脳構造全体の指標として橋の容積も算出した。Mann-WhitneyU検定により2群間比較した。
【結果】 2群間の年齢 [Fontan群 :中央値9.1(7.3-14.2) 歳 vs 対照群 中央値9.9(5.9 -13.8)歳, P=0.208]と性別(Fontan群:女 17 vs 対照群:女 19, P=0.097)に有意差はなかった。Fontan術後年数は中央値9.2(8.6―10.4) 年であった。Fontan群の扁桃体容積は対照群と比較して優位に大きかった。[Fontan群:中央値1082(701-2088)mm3 vs 対照群:中央値966(500-1480)mm3, P=0.021)。 一方で橋容積は、Fontan群:中央値7105(5062-8821)mm3に対して、対照群:中央値7759(5589-10454)mm3、P=0.075であり有意差はなかった。
【結論】健常児と比較しFontan術後患者では扁桃体容積は増加していた。生後からFontan循環に至るまでのストレスが扁桃体に影響を及ぼしている可能性がある。フォンタン術後の患者は他の先天性心疾患の患者と比較して、気分障害や不安障害が多いとの報告があり、脳の器質的変化が彼らの精神面に影響を及ぼしている可能性が示唆された。