[OR13-3] 完全大血管転位症術後の肺動脈狭窄に対してcovered stentを留置した2症例
Keywords:肺動脈狭窄, Covered stent, 完全大血管転位
【背景】完全大血管転位(TGA)のLecompte法を用いた動脈スイッチ術(ASO)後に左右肺動脈はしばしば狭窄する。バルーン血管形成術(BA)は狭窄の原因が血管の屈曲や大動脈などによる圧迫の場合は多くが無効で、また偶に大動脈肺動脈瘻を合併する。ASO後の圧迫が原因である肺動脈狭窄に対し、柔軟かつradial strengthのあるcovered stent GORE VIABAHN VBX(GVV)を留置した2例の経過を報告する。【症例1】18歳、男性。TGA1型(Shaher1型)に対し日齢5にASO施行。15歳時に左冠動脈主幹部閉塞に対し左肺動脈を離断し、冠動脈形成後に、圧迫回避目的に14mm Gore-Tex人工血管をinterposeして左肺動脈を再建。しかし同部位は重度狭窄し、術後5ヶ月と7ヶ月時に施行したBAは無効。術後11ヶ月時に人工血管の両端を越える長さのGVV 11mm×40mmを留置し、14mm XXL balloon cath.で後拡張を施行。18ヶ月後、内膜増生はごく軽度で、ステントは良好に開存し、肺血流シンチは右:左で92:8から60:40に改善。【症例2】7歳、男児。{ILL}, dextrocardia, TGA1型(Shaher1型)に対し日齢13にASO施行。左肺動脈は近位部が後方から大動脈に圧迫され、遠位部は大動脈と上大静脈に挟まれて狭窄。1歳半時に施行したBAは無効。7歳時に狭窄部径6.7mm、参照血管径 10.4mmの屈曲病変に対しGVV 11mm×29mmを留置し、狭窄は解除された。上大静脈はステントに圧迫されて変形したが、有意な圧較差はなし。【考察】ASO後の肺動脈狭窄はBAが無効な場合があり、またステント留置でも大動脈肺動脈瘻の報告がある。効果、安全性の点から成長途中の小児においても柔軟かつ最終拡張径が十分なcovered stent留置は第一選択になり得ると思われる。長期成績は今後の検討を要する。