[OR20-5] 本邦における長期EXCOR管理の特異性:非典型的合併症や成長に応じたサイズアップの報告
キーワード:EXCOR, 補助人工心臓, 心臓移植
【背景・方法】EXCORは小児重症心不全の安定したVAD管理を実現した. しかし本邦では移植心ドナー不足を背景に, 他国(平均補助期間2-3か月)に類を見ない長期補助という特殊な状況が生じている. 当院でEXCORを装着した11例の経過を振り返り, 長期補助との関連が疑われる事象を報告する. 【結果】11例全例がLVAD, 装着時年齢は1か月-13歳(中央値1歳9か月)に亘り, 0歳が2例, 1歳が5例を占めた. 装着時体重は中央値7.5kg(3.3-25kg)だった. 転帰は心移植到達が7例(うち渡航3例), 心機能回復による離脱が1例, 死亡が1例, 待機中(2021年2月現在)が2例, 待機中の症例を除く平均補助期間は12(5-26)カ月だった. 感染, 血栓症, 出血による死亡はなかった. 特記すべき合併症として1例に送血カニュレの断裂を来した. これは月齢2で装着した例が, 7か月後に突如送血カニュレ刺入部より多量に出血しショックに陥り, 術中にカニュレ断裂が判明したものだった. また2例で体格の成長に伴いポンプのサイズアップを要し, いずれも乳幼児期(10カ月, 1歳11か月)かつ比較的低体重(4.1kg, 4.8kg)での装着例だった. サイズアップ直前のEXCOR駆出量(E-CI, L/min/m2)は2.8及び3.5であり, 他9例の最終E-CI:中央値2.4(2.1-2.9)と比較して高めの設定だったが, 肺うっ血が進行しサイズアップにより改善した.【考察】EXCORカニュレ断裂の報告はなく, 自験例での原因は不明ながら経年劣化や成長による伸展の影響が疑われる. また十分なE-CIを設定しても改善しない臨床症状がある場合はサイズアップを考慮する. その指標となる症状として, 一般的な低心拍出症状に加え, 肺うっ血に留意する. E-CIが十分でも右心機能とのインバランスや残存左心機能との干渉により肺うっ血を来す可能性がある.【結語】本邦の長期補助期間中は, 非典型的な合併症の頻度が増えることが予想され注意を要する. また患児の成長も考慮し適宜サイズアップを検討する必要がある.