[OR21-3] 小児がん生存者におけるアントラサイクリン系心毒性の長期経過観察時に重要な指標の検討
Keywords:アントラサイクリン系心毒性, 左室層別ストレイン, 拡張早期左室内圧較差(IVPG)
【背景】小児がん生存者において重要な予後決定因子であるアントラサイクリン系心毒性は、用量依存性かつ進行性であり、長期的な経過観察を要し、より鋭敏な心機能低下の指標が求められている。近年では、左室層別ストレインや拡張早期左室内圧較差(Intra ventricular pressure gradient: IVPG)などの鋭敏な早期指標の有用性が報告されてきたが、いまだに長期間の心機能低下の進行様式は明らかではない。【目的】幅広い年齢層の小児がん生存者に対し、層別ストレイン及びIVPGを用いて、アントラサイクリン系心毒性の進行様式を明らかにし、長期経過観察時に有用な指標を明らかにすること。【方法】対象は4から40歳のアントラサイクリン系抗癌剤を用いた小児がん生存者群116例と年齢と性別を近似させた正常対照群116例で、年齢により3群に分類した(C1、N1:4-12歳、C2、N2:13-18歳、C3、N3:19-40歳)。胸骨傍短軸像より心基部、乳頭筋部、心尖部の円周方向ストレイン(CS)を、心尖部四腔断面像より長軸方向ストレイン(LS)を内層、中層、外層の層別に、Color-M-modeより全左室、心基部及び心尖部IVPGを計測した。【結果】C1群から心基部及び乳頭筋部CSの内層、中層及びLS全層が低下し、C2群から全てのIVPGが低下していた。しかしLSは年少群から年長群まで正常症例とほぼ平行して推移するが、心基部CS、全左室及び心基部IVPG年齢と相関して低下した。全左室及び心基部IVPGはアントラサイクリン投与量と相関して低下した。【結論】層別ストレイン及びIVPGはアントラサイクリン系心毒性の早期発見の指標となりうる。また心基部CS及び心基部IVPGは経年的に悪化する可能性があり、これらの指標に留意して長期経過観察を行う必要がある。