[OR25-4] 心拍変動はフォンタン循環不全の早期指標となりうるか? ~ホルター心電図を用いた後方視的解析~
Keywords:Fontan循環, Holter心電図, 心拍変動
【背景】Fontan循環は高い中心静脈圧(CVP)と低い心拍出量を特徴とする点で、慢性心不全に類似した循環であり、遠隔期に様々な臓器合併症を呈することが課題である。慢性心不全同様に、Fontan循環でも心拍数管理が予後改善に向けた治療ターゲットになるうるという仮説を検証した。【対象と方法】 2012年12月から2021年2月にHolter心電図を施行したFontan術後患者63例を対象として、総心拍数(THB)、最低心拍数(min HR)、最高心拍数(max HR)、平均心拍数(mean HR)、上室期外収縮および心室期外収縮と循環動態指標(CVP、肺動脈楔入圧:PCW、心室容積係数: EDVIと駆出率: EF、BNP、AST、ALT、LDH、γGTP)との関連を検討した。また39例では心拍変動(HRV)についても各指標との関連について検討した。【結果】THB (132528±22128)、min HR (67±16)、max HR(154±30)は術後年数の経過とともに低下した(ともにp<0.001)。ANCOVAを用いて年齢を調整すると、高いmin HRはCVP (p=0.041)、PCW (p=0.054)、BNP (p=0.036)の高値と関連し、好ましくないフォンタン循環を反映する可能性を示唆した。また高いmin HRは高いγGTP (p=0.028)と、高いmax HRは低いeGFR (p=0.022)と相関し、臓器障害と関連する可能性を示唆した。心室性・上室性不整脈とFontan循環との関係性は明らかでなかった。HRVの各パラメーターと循環動態指標の有意な相関は認めなかったが、興味深いことに、心疾患予後悪化と密接な関連が指摘されているSDNN減少と高いmin HRの間に強い関連を認めた(R2=0.71, p= 0.0002)。【結論】 高いmin HRはFontan循環不全の早期指標であり、最低心拍数の管理はフォンタン循環改善の新しい治療ターゲットになる可能性がある。