[OR26-4] Fallot四徴症修復手術後の成人の大動脈基部拡大と弾性低下 に関する前向きコホート研究(TRANSIT)
Keywords:ファロー四徴症, aortopathy, TOF
[ 背景・目的] Fallot 四徴( TOF )修復手術後の成人では,約 15% に大動脈壁の弾性低下による大動脈基部拡大( AD )が合併するといわれている。 AD は,左室機能低下,大動脈弁閉鎖不全,さらに大動脈解離もともなう aortopathy であるが,日本での実態や有効な薬剤は明らかでない。そこで,日本人を対象にTOF (肺動脈閉鎖PA/VSDを含む)の診断で修復手術を行った 20 歳以上の成人を対象とした多施設共同前向きコホート研究(TRANSIT )を計画した.症例数は全122症例。[ 方法 ] 初回検査時の心臓超音波検査の画像(CDで収集)を中央解析で評価し、バルサルバ洞径 (Val)を評価した。更にADを男女別にVal +2.0SD以上と定義し、大動脈基部拡大あり群(AD群)と拡大なし群(NL群)とのリスク因子の検討を行った。 [ 結果 ] 対象は開始時調査のうち中央解析を終えた99症例。年齢24歳 6か月から43歳0か月(平均33歳9か月)、男性28例(56%)、体表面積 1.66±0.22(m2)、染色体異常8例、右大動脈弓3例、PA/VSD 4例。 Val計測値 (% of Normal) は 35.0 ± 5.8mm(112 ± 15% of N) 。AD群は21例(19%)であった。ADリスク因子として考えられた、男性、大動脈肺動脈シャント既往、PA/VSD、右大動脈弓、染色体異常について検討したが、AD群とNL群では意差はみられなかった。また大動脈弁形成術や置換術の施行例はなかった。一方、AD群において拡張期左室壁厚が厚く、脈波伝播速度が速いという傾向がみられた。 [ 考察 ] 日本人のTOF 術後成人例において18%にADが見られ、海外の報告と同様であったが、開始時調査の結果からは有意なリスク因子は指摘できなかった。本研究では3年後に心臓超音波検査を行うことにより、大動脈基部径の拡大率とリスク因子を明らかにする予定である。