[OR32-5] 川崎病における冠動脈分岐角と冠動脈瘤形成の関係
Keywords:川崎病, 冠動脈病変, 心エコー
【背景】脳動脈瘤は動脈分岐部に好発し、血管ずり応力が影響している。川崎病性冠動脈瘤も血管分岐部に後発し、汎血管炎に続く血管壁構築の脆弱性と血管ずり応力が影響していると報告されている。【目的】川崎病患者において、左冠動脈の主幹部(LMT)に対する前下行枝(LAD)と回旋枝(LCX)の分岐角と冠動脈瘤発生との関連について検討する.【方法】2017年1月から2020年12月までの期間に入院した川崎病患者の心エコー図画像を後方視的に検討した。LMTからLAD,LCXがそれぞれ分岐する角度を計測した.急性期冠動脈病変の有無で2群に分け、その角度を比較検討した.【結果】対象期間中に入院した川崎病症例は96例で,期間中に再発した2例を除き,94例を解析対象とした.急性期冠動脈病変は9例(9.6%)に認め,うち左冠動脈に病変をきたしたのは8例(8.5%)であった.冠動脈径は冠動脈合併群と非合併群のそれぞれにおいて、LMT 2.2±0.5 mm(Z値2.5±1.1) vs 2.2±0.3 mm(Z値0.8±0.7)(P=0.033),LAD 2.4±0.8 mm(Z値3.0±1.6) vs 1.7±0.15 mm(Z値0.6±0.8)(P=0.011),LCX 2.0±0.33 mm(Z値1.5±1.4) vs 0.3 mm(Z値 0.34±0.7)(P=0.008)であった.冠動脈病変合併群でIVIG不応例が多かったが(85% vs 100%, p=0.013),年齢,性別,主要症状,白血球数やCRP値で有意差は認めなかった.冠動脈病変合併群において,LMT-LCXの分岐角度が有意に小さかった(149±6° vs 121±10°; p=0.001).LMT-LADの分岐角度については,有意差を認めなかった(147±5° vs 146±7°; p=0.519).【考察】LMTに対するLCXの分岐角が冠動脈発生に関連している可能性を示唆した。冠動脈分岐角により分岐部にかかる血流量および血管内皮が受けるずり応力が異なってくることが推測された.冠動脈瘤形成には炎症や治療反応性といった要因の他に,冠循環に関する血行力学的な検証が重要であることが示唆された.