The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラルI(OR32)
川崎病・冠動脈・血管 1

指定討論者:三谷 義英(三重大学大学院医学系研究科小児科学)
指定討論者:小林 徹(国立成育医療研究センター)

[OR32-4] IVIG不応例予測のバイオマーカーとしてのMMP-3

中島 康貴, 山口 賢一郎 (国立病院機構 小倉医療センター 小児科)

Keywords:川崎病, IVIG不応, MMP-3

【背景】マトリックスメタロプロテイナーゼ-3(MMP-3)は線維芽細胞や平滑筋細胞、マクロファージ等から分泌される蛋白分解酵素で、関節リウマチなどの疾患において関節炎のマーカーとしてよく知られている。川崎病で血清MMP-3値が増加することや、MMP-3の遺伝子多型と川崎病における冠動脈病変との関連がこれまで報告されている。しかしながら、川崎病における免疫グロブリン大量療法(IVIG)不応と血清MMP-3の関連についてはこれまで報告されていない。
【対象と方法】当院で2018年7月から2020年6月までの2年間に川崎病に対してIVIGによる治療を行われ、IVIG治療前に血清MMP-3を測定した症例を対象とした。初回治療としてのIVIGへの反応例と不応例における血清MMP-3値について、診療録を元に後方視的に検討を行った。
【結果】対象の2年間に当院で96例の川崎病の患児に対してIVIGによる治療を行った。初回のIVIG治療への反応例は75例、不応例は21例であった。MMP-3が測定された症例は89例(IVIG反応例69例、不応例20例)で、不全型の症例はなかった。20例の初回IVIG不応例のうち15例はIVIG 2回、2例はIVIG 2回及びインフリキシマブ、2例はIVIG 3回、1例はIVIG 3回及びウリナスタチンによる治療を行われた。血清MMP-3が測定された時点で関節炎症状のあった症例はなかった。発症1か月後時点での冠動脈拡大が2例に、冠動脈の一過性拡大が3例に見られた。血清MMP-3値は初回IVIG治療への反応例 vs 不応例: 中央値13.9 (四分位点10.3-21.7) ng/ml vs 中央値31.65 (四分位点17.0-59.0) ng/ml (p=0.0003)であった。ROC解析を行うとAUC 0.764 であり、16.5ng/mlをカットオフとすると感度85%、特異度 65%であった。
【結語】血清MMP-3値は川崎病におけるIVIGの治療反応性の予測に有用なバイオマーカーとなりうると考えられた。