The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

学校保健・疫学・心血管危険因子

デジタルオーラルI(OR35)
学校保健・疫学・心血管危険因子

指定討論者:鮎沢 衛(日本大学医学部小児科)
指定討論者:太田 邦雄(金沢大学)

[OR35-3] 新生児マススクリーニングで発見されたプロピオン酸血症患者における心臓合併症の検討-軽症プロピオン酸血症患者の長期予後解明に向けた取り組み-

森田 理沙, 浦山 耕太郎, 真田 和哉, 田原 昌博 (土谷総合病院 小児科)

Keywords:プロピオン酸血症, 拡張型心筋症, QT延長症候群

【背景】プロピオン酸血症(PA)は、典型的には新生児~乳児期に、代謝性アシドーシスと高アンモニア血症を伴って急性脳症様に発症する有機酸代謝異常症である。国内推計頻度(約1/40万人)に対して、新生児マススクリーニング(NBS)での頻度は約10倍も高い。NBSで発見される大半が無症状で、7~8割が共通変異PCCB p.Y435Cを有する。一方、定型的な臨床経過を伴わず、心筋症やQT延長所見のみでPAが判明した症例が報告されており、代謝不全発症に関わらず、心臓合併症が出現・進行する可能性がある。心臓病変の形成は異常代謝産物による慢性毒性が主な要因であることが示唆され、NBSで発見された患者でも、血中・尿中の異常代謝産物は比較的軽度ながら常に増加しており、長期的な心臓合併症の進行が懸念されるが、その長期予後は不明である。
【目的と方法】PA患者における心臓合併症の頻度を調べる目的で、2015年までにPA発症後に診断された27例(A群)、NBSで発見された87例(B群)を対象に心臓合併症の有無についてアンケート調査を行った。
【結果】A群15例、B群87例から回答を得た。心臓合併症はA群15例中、QT延長4例、心室頻拍1例、拡張型心筋症(DCM)3例、左室拡張1例、B群87例中、V1のQSパターン1例、軽症DCM1例、中等度僧帽弁閉鎖不全1例であった。
【考察】B群の心臓合併症は軽症であった。NBS発見症例の心臓合併症の長期予後を明らかにするためには1世代以上に亘る追跡を要することになるため、別の検討方法として、心疾患患者群中のPA頻度と軽症変異例の有無の調査を立案した。国内主要医療機関(小児循環器科及び循環器内科)を対象にアンケート調査を行い、原因不明の心筋症・QT延長症候群で診療されている患者を対象に、PAに合致する異常代謝物増加の有無について調べる研究を計画した。この調査研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の分担課題(課題管理番号JP20ek0109482)として実施する予定である。