[OR36-5] 左心低形成症候群におけるNorwood手術時の肺血流源:Dunk法とBTshunt法の比較
Keywords:左心低形成症候群, Norwood, Dunk法
【背景】左心低形成症候群のNorwood術時の肺血流源は,時代とともに変遷してきた.当院でも黎明期は主に従来のRV-PAconduitが,その後周術期管理への精通に伴いBTshunt(B群)の割合が増え,2014頃からはDunk法(D群)によるRV-PAconduitが主に選択されている.【目的】D群およびB群の利点欠点を明らかにすること.【方法】両側肺動脈絞扼術(BPAB)による段階的戦略が始まった2009年から2020年にNorwood術施行の56例からD群22例,B群21例を対象に周術期およびグレン術前データを比較検討した.【結果】Norwood術時日齢/体重/BPAB既往は同等であった(D群vs B群27(3-152) vs 31(8-106)日,3.1(2.7-4.2) vs 3.1(2.1-4.1)kg,18 vs 20例).周術期関連項目では,術中の三尖弁形成,ポンプ時間で差を認めた(D群vs B群9 vs 1例,260(185-350) vs 217(157-304)分)が,二期的閉胸,抜管,CCU退室までの期間は同等であった(D群vs B群6(3-31) vs 4(2-17),14(8-104) vs 12(7-88),35(13-255) vs 21(10-170)日). グレン前心カテ時日齢/体重も同等で(D群vs B群174(132-475)日 vs 171(73-266)日, 5.1(3.3-6.4) vs 4.4(3.4-7.3) kg),有意差を認めた項目は,BNP,心カテ中の酸素使用,平均肺動脈圧,大動脈圧拡張期収縮期比,PAindexであった(D群vs B群160(47-603) vs 312 (48-3186)pg/ml,10/16 vs 5/19例,14(8-20) vs 15(11-23)mmHg,0.49(0.36-0.56) vs 0.43(0.30-0.51),106(50-172) vs 139(89-189)mm2/m2). 一方でmoderate以上のTR,RVEF,Qp/Qs,Rp等の項目は同等であった.グレン到達/死亡例はD群14/7例/B群19/1例であった.【考察/結論】今回のデータでは両群間に周術期の項目では有意差を認めず,BDG術前の段階では,BNPや大動脈圧拡張期収縮期比からD群で血行動態はより安定しているものの,酸素使用例,PAindexからBTS群の方が肺動脈の成長が良いことが示唆された.現時点では,弁機能等に余裕のある症例では,肺動脈の成長のためBTSの選択を再考してもいいかもしれない.