第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラルI(OR37)
外科治療 2

指定討論者:小出 昌秋(聖隷浜松病院 心臓血管外科)
指定討論者:白石 修一(新潟大学医歯学総合病院)

[OR37-5] 両側肺動脈絞扼後の二心室修復成立例と不成立例の比較

鈴木 康太1, 金 成海1, 石垣 瑞彦1, 佐藤 慶介1, 芳本 潤1, 満下 紀恵1, 新居 正基1, 田中 靖彦1, 坂本 喜三郎2 (1.静岡県立こども病院 循環器科, 2.静岡県立こども病院 心臓血管外科)

キーワード:border-line case, bilateral pulmonary artery banding, biventricular repair

【背景】両側肺動脈絞扼 (bilateral pulmonary artery banding: BPAB)は、低出生体重や左室流出路狭窄を伴う二心室修復 (biventricular repair: BVR)対象症例に対する初回姑息術として確立しつつある。しかし,単心室修復とのborderline症例でBPABが果たす役割や,BVR成立のための治療戦略について検討した報告は少ない.【方法】対象は2009年から2020年に当院でBPABを施行した28症例で,出生後の経過や画像検査結果を診療録から後方視的に検討した.BPAB前にBVRが不可能と判断した症例や,BVR到達前に死亡した症例は対象から除外した.【結果】28例の内訳は,大動脈離断9例,大動脈縮窄複合8例,総動脈幹症3例,重症大動脈弁狭窄3例,左心低形成症候群2例,他3例だった.うち20例は低出生体重を主因とする初回BPABで成長後にBVRに到達,残り8例はモニタリング目的にBPABを適用し,うち4例がBVRに到達した.この4例中2例は心内膜線維弾性症を合併していたが,BPAB後から徐々に拡張能の改善を認めたためBVRに到達し得た.残り2例は境界域の左室低形成だったが,BPAB後に左室容積の成長を経時的に確認出来たためBVRを選択した.単心室修復を選択した4例中1例は,大動脈離断,両大血管右室起始,左室・上行大動脈低形成の診断で,日齢2にBPAB,日齢11にNorwood + Blalock-Taussig shunt (1 clip)を行った.その際,心房中隔欠損を半閉鎖し,生後5か月時にshuntの経カテーテル的バルーン拡張を行うことで,左室へ容量負荷をかけて成長を促す戦略を用いた.しかし後日施行した心臓MRI検査では左室拡張末期容積係数 47.5 mL/m2と左室の成長は乏しく,単心室修復を選択した.【考察】Borderline症例において,BPAB後にBVRに到達できる可能性は必ずしも高くない.一方,経カテーテル的肺血流調整や心房中隔欠損の半閉鎖により,左室拡張能の改善や左室容積の成長を認めBVRに到達できる症例が存在し,一定の判定期間を提供できる.