第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療遠隔成績

デジタルオーラルI(OR39)
外科治療遠隔成績

指定討論者:帆足 孝也(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
指定討論者:芳村 直樹(富山大学)

[OR39-1] 肺動脈弁閉鎖不全に対する肺動脈弁置換術時に併施した不整脈手術の遠隔期成績と不整脈再発に関与する因子の検討

富永 佑児, 平 将生, 荒木 幹太, 渡邊 卓次, 長谷川 然, 上野 高義, 澤 芳樹 (大阪大学大学院 医学系研究科 心臓血管外科)

キーワード:ファロー四徴症, Maze procedure, 上室性不整脈

[背景]成人先天性心疾患患者の上室性不整脈罹患率は高く,QOLの低下や心不全進行の一因となる.Fallot四徴(TF)または肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損(PAVSD)心内修復術後遠隔期おいても上室性不整脈が問題となり,右室流出路機能不全に対する肺動脈弁置換術(PVR)時に不整脈手術を要することがあるが,長期成績については明らかではない.[目的]PVR時の不整脈手術後の長期予後と再発risk因子を検討すること.[方法]対象は2003~2019年に当院でTF, PAVSD心内修復術後に肺動脈閉鎖不全に対しPVRを施行した63例(TF57,PAVSD6).PVR前に上室性不整脈を呈した22例(発作性心房細動13,慢性心房細動4,心房粗動4,心房頻拍1)にMaze procedure (Right side Maze18,Cox Maze lll 4)を併施した.上室性不整脈の再発はcardioversion,薬物治療,または経カテーテルアブレーションのいずれかの治療を要したものと定義し,再発率の解析を行なった. また,術前心臓エコー,MRI,CT,カテーテル検査.術中右室心筋biopsyにて測定したparameterからrisk解析を行なった.[結果]術後フォローアップ期間は7.5±3.8年(平均±標準偏差).心臓関連死亡は認めなかった.Maze procedureを施行した22例の上室性不整脈再発回避率は5年68%,10年51%であった.多変量解析では術前右房容積index(RAVI)(hazard ratio[HR] 1.04,95% confidence interval[CI] 1.01-1.07, p=0.012),術前拡張末期肺動脈順行性血流(EDFF)陽性(HR 17,95%CI 1.9-149, p=0.012)が有意な因子であった.RVEDP(p=0.15)やmoderate以上のTR(p=0.16)は有意な関連を認めなかった.また,Maze procedureを施行した22例のPVR術前RAVIは中央値88ml/m2であり,88 ml/m2以上の症例群の方が88 ml/m2未満の症例群と比較し再発回避率は有意に低かった(5年40% vs 91%,Log-rank p=0.029).[まとめ]上室性不整脈の再発率はPVR術後5年で約30%と高く,術前の右房容積拡大とEDFF陽性はMaze手術後の上室性不整脈再発のrisk因子であった.