[P1-2] 心内奇形を合併しない右側大動脈弓関連血管輪の臨床像
Keywords:右側大動脈弓, 血管輪, 胎児スクリーニング
【背景】胎児スクリーニングの進歩に伴い、無症状のまま血管輪と診断、または疑われる症例が増えている。右側大動脈弓関連の血管輪は重複大動脈弓に次いで2番目に頻度が多い。一般的に重複大動脈弓と比較して軽症とされるが、その自然歴はまだ十分にわかっていない。確定診断のために動脈管が閉鎖される前の生後早期に造影CTなどを積極的に行う施設がある一方、症状を呈さない症例に対する画像診断や治療について一定のコンセンサスはない。【目的】心内奇形を合併しない右側大動脈弓関連血管輪の臨床像を検討すること。【方法】2010年以降に当院で診断された右側大動脈弓関連血管輪を対象とした。(1)診断契機、(2)造影CTの有無、実施時期、画像所見、(3)臨床症状、(4)転帰などについて診療録より後方視的に検討した。【結果】症例は9例(男7)、7例は胎児診断(疑い含む)され、1例は生後心雑音に対するスクリーニング心エコー、1例は13歳時に他疾患に対する胸部CT検査時に偶発的に診断された。造影CTは5例で施行され、実施年齢の中央値は12か月(6か月~13歳)であった。4例は左鎖骨下動脈起始異常、Kommerell憩室、1例は大動脈分枝mirror image、下行大動脈―肺動脈をつなぐ左動脈管であった。全例動脈管閉鎖後であったがCT所見から血管輪の診断は可能だった。いずれの症例も画像上有意な気道狭窄所見は認められなかった。1例は11か月時に気道症状、体重増加不良適応に手術介入された。その他の症例は無治療で現在6例は経過観察中、2例は定期通院なし。観察期間の中央値は12か月(1か月~2年11か月)であった。【結論】無症状で診断された心内奇形を合併しない右側大動脈弓関連血管輪症例のほとんどは観察期間中に症状を呈さなかった。この一群に対する造影CT検査の必要性について議論の余地があるが、新生児期以降の動脈管閉鎖後でも十分に診断可能と思われる。長期フォローの必要性については今後の課題と考えられる。