The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

一般心臓病学

デジタルオーラルII(P1)
一般心臓病学 1

指定討論者:田原 昌博(あかね会土谷総合病院)
指定討論者:桑原 尚志(岐阜県総合医療センター)

[P1-3] 急速に増大した血栓により緊急手術に至った動脈管瘤の新生児例

稲木 秀英1, 北川 篤史1, 本田 崇1, 岡村 達2, 平田 陽一郎1, 中西 秀彦1, 宮地 鑑2, 石倉 健司1 (1.北里大学医学部 小児科学, 2.北里大学医学部 心臓血管外科学)

Keywords:動脈管瘤, 血栓, 新生児

【背景】動脈管瘤は、動脈管が嚢状もしくは紡錘状に拡張したものである。多くは無症状で自然消退するが、まれに破裂や血栓塞栓症などの合併症をきたす可能性がある。今回我々は、出生時には無症状であった動脈管瘤から血栓が急速に増大し、緊急手術に至った新生児例を経験したので報告する。【症例】在胎週数39週0日,出生体重2444g,胎児機能不全で緊急帝王切開により前医で出生した。アプガースコア1分値6点、5分値7点で新生児仮死と呼吸障害のため、北里大学病院NICUに転院となった。転院時の心エコー検査で、左肺動脈内に突出する腫瘤を認めた。また、胸部造影CT検査で主肺動脈と大動脈弓の間に造影効果のない腫瘤を認め、動脈管瘤および瘤内血栓の可能性が考えられた。日齢0から血栓塞栓症の予防として抗凝固療法(ヘパリン4.8単位/kg/h)を開始した。新生児仮死による呼吸障害に対して人工呼吸器管理を開始したが、速やかな呼吸状態の改善を認め日齢2に抜管した。肺動脈内に突出した血種は徐々に増大し日齢6にチアノーゼ、左肺動脈閉塞による右室負荷所見を認めたため、同日緊急で血栓除去、動脈管瘤切除術を施行した。術後経過は良好で、肺動脈狭窄や神経学的後遺症なく術後18日に退院した。【考察】出生直後の心エコーを用いたスクリーニング検査で、動脈管瘤から肺動脈内への血栓突出を偶然発見した。診断時には臨床症状を認めなかったが、末梢動脈への血栓塞栓症の危険性もあった。一方で新生児期早期の心臓手術も危険性が高く、血栓が自然消退する報告もあるため抗凝固療法による保存的治療を選択した。結果的に本症例では急速な血栓の増大と肺動脈塞栓による症状を認めたため、緊急手術に至った。動脈管瘤とそれに合併する血栓を認めた場合は、バイタルサインおよび日々の心エコーによる注意深い観察が重要であり、適切かつ迅速なタイミングでの外科的介入が必要である。