[P1-5] 胎児期の左心系発育不全が新生児期に改善した卵円孔早期閉鎖の1例
Keywords:卵円孔早期閉鎖, 新生児, 左心系発育不全
【背景】卵円孔早期閉鎖は、胎児期の左室血流低下に由来する左室発育不全と、生後の左心系容量負荷により心不全を来す可能性を有する疾患である。左心低形成症候群を代表とする合併心疾患を伴うと予後は非常に悪いことが知られているが、他に心合併症のない卵円孔早期閉鎖単独例については、症状の幅が広く無症状例もある。その中で出生後の左心系の発育の経過が示された報告は限られている。今回、当院で経験した卵円孔早期閉鎖例の出生後における経時的な心臓の形態変化について報告する。【症例】在胎28週5日の胎児心エコー図検査に問題はなく、在胎35週5日に卵円孔早期閉鎖と診断された。Cardiothoracic area ratio 39.5 %と拡大を認めたが、その他の心不全所見は認めなかった。妊娠36週5日に吸引分娩にて出生した。体重2372g、Apgar Score 4 /6 /9 点(1/5/10分)、新生児一過性多呼吸を認めたが4日間の酸素投与で軽快した。出生時の心エコー図検査で卵円孔は閉鎖しており、左房拡大、左室後壁心筋の菲薄化、3弁形態の小さな大動脈弁、軽度の三尖弁逆流および僧帽弁逆流を認めた。動脈管は両方向性シャントであった。その他の合併心疾患は認めなかった。動脈管は日齢2に閉鎖し、以後も心不全徴候は見られず、日齢9に退院した。日齢0、2、4、30に実施した心エコー計測値は、それぞれLVEF:67 %、67 %、59 %、71 %、LVEDd:15.7 mm(-0.7 SD)、16.4mm(-0.3 SD)、17.0 mm(0.1 SD)、19.0 mm(0.0 SD)、LVPWd:1.2 mm(-4.2 SD)、1.9 mm(-1.8 SD)、2.6 mm(-0.2 SD)、2.8 mm(-0.2 SD)、Av:4.6 mm(-3.0 SD)、5.3 mm(-1.6 SD)、6.3 mm(0.1 SD)、6.8 mm(-0.3 SD)であり、いずれの計測値も新生児期に正常化した。【結論】胎児期の卵円孔早期閉鎖単独で生じた出生時の左心系発育不全は、新生児早期に正常化する場合がある。