[P10-1] 経皮的心房中隔欠損作成術により十分な左室圧上昇を得ることができた修正大血管転位症、肺動脈絞扼術後の1例
Keywords:修正大血管転位症, 経皮的心房中隔欠損作成術, ダブルスイッチ手術
【はじめに】左室圧の低下した修正大血管転位(CCTGA)への肺動脈絞扼術(PAB)はダブルスイッチ(DSO)到達のための左室圧上昇の手段だが、十分な左室圧上昇を得ることが難しい場合もある。経皮的心房中隔欠損作成術を加え、十分な左室圧上昇を得られた症例を経験したので報告する。【症例】前医で胎児診断されたCCTGA。生後2か月時に当科初診し、心室中隔欠損(非常に小さく2mm以下で短絡はごくわずか)、中等度の三尖弁逆流(TR)、右心不全を認め、利尿剤内服を開始した。6か月時、カテーテル検査での左室(LV)/右室(RV)圧比=0.35と左室圧は既に低下しており、MRIでは右室拡張期末期容積係数(RVEDVI)81ml/m2、右室駆出率(RVEF)59%、左室拡張期末期容積係数(LVEDVI)37ml/m2、左室駆出率(LVEF)77%、3DエコーではRVEDVI 66ml/m2、LVEDVI 42ml/m2であった。TRが中等症であるためDSOの適応と判断し、11か月時に左室圧上昇目的にPABを施行した。術後3か月のカテーテル検査ではLV/RV圧比=0.64でありDSOを行うには左室トレーニングがまだ必要だが、PABは4.7mmと既に十分細かったため、1歳6か月時(術後7か月)に左室流入血流増大を目的とした経皮的心房中隔欠損作成術(Nykanen RF wireを用いたwire atrial septostomy(WAS))を行い、心房中隔長25mmに対して7mmの孔を開けた。 6ヶ月後のカテーテル検査でLV/RV圧比=0.9まで上昇し、MRIでは肺体血流比=1.2、RVEDVI 59ml/m2、RVEF 67%、LVEDVI 45ml/m2、LVEF 63%と左室圧のさらなる上昇、TRの改善に伴い右心機能の改善が得られた。【結語】CCTGAでDSOが適応となる症例において、肺動脈絞扼術のみで左室圧が十分に上昇しない症例への戦略として経皮的心房中隔欠損作成術の追加は有用な可能性がある。