The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

複雑心奇形

デジタルオーラルII(P10)
複雑心奇形 3

指定討論者:高橋 邦彦(大阪母子医療センター)
指定討論者:北野 正尚(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター)

[P10-2] 下心臓型総肺静脈還流異常症の早産・低出生体重児の1例~ステント留置をチャレンジするべきだったか?~

亀井 直哉, 田中 敏克, 堀口 祥, 三木 康暢, 松岡 道生, 小川 禎治, 富永 健太, 城戸 佐知子 (兵庫県立こども病院 循環器内科)

Keywords:総肺静脈還流異常, 早産児, ステント留置

<背景>垂直静脈狭窄を伴う総肺静脈還流異常症は、新生児早期の開心術を要する疾患である。しかし、早産児や低出生体重児の症例では手術リスクや術後の肺静脈狭窄の懸念もから、初回介入としてカテーテルによる狭窄解除治療が選択されることも多い。<症例>母体は妊娠31週0日に胎児心疾患疑いと完全破水のため当院搬送。胎児心エコーで下心臓型総肺静脈還流異常症と診断。垂直静脈は静脈管に還流し、流入部はヘアピン様に屈曲しており高度の狭窄を呈していた。陣痛抑制困難、感染徴候増強のため在胎32週4日経膣分娩で出生、体重1656g。RDSに対してサーファクタント投与、心エコーで同様の診断を確認、動脈管は右左シャントであり日齢1よりLipo-PGE1開始した。狭窄部に対するカテーテル治療も検討したが、形態的に困難と判断し断念した。徐々に肺うっ血の進行ありSpO2低下が頻回となったため、日齢28(修正36週4日)体重1860gでsutureless法による修復術を行った。術中所見で肺はリンパ管拡張を認めていた。術後肺静脈狭窄は認めなかったものの乳び胸水に難渋しており、術後6ヵ月になる現在まで両側の胸膜癒着療法を繰り返している。<考察>本例は胎児期から明瞭な肺静脈狭窄機転が存在しており、かつ生後の肺血流増加に伴い肺静脈うっ血が増強していったことが、術後の難治性乳び胸水の一因であると考えられる。このような経過を回避するためには狭窄機転の速やかな解除が望ましいが、今回のような早産児(特に34週未満)では生後早期の手術はリスクが高いため、出生前からカテーテルによる姑息的な狭窄解除術の可能性を検討していた。狭窄機転から推測するとバルーンの有効性は低いと予想され、また安全かつ有効な位置へのステント留置も難しいという判断をしたが、ステント留置の可能性について再考の余地がないか検討した。