[P10-3] 心室中隔欠損を伴わない肺動脈弁欠損の1例
Keywords:肺動脈弁欠損, 三尖弁狭窄, 気道
【背景】肺動脈弁欠損はファロー四徴症に合併することが多く、拡張した肺動脈による気管・気管支の圧排が問題となるが、今回心室中隔欠損を伴わない肺動脈弁欠損の1例を経験した。気道に関する問題は経過を通じて生じず、順調にフォンタン手術を終了し外来で経過観察中である。心室中隔欠損を伴わない肺動脈弁欠損でフォンタン循環に到達した例は検索範囲内で過去に2例しか報告がなく、貴重な症例と考えられたため報告する。【症例】現在6歳の女児。胎児診断なし、出生日に多呼吸、チアノーゼの指摘があり当院に搬送、肺動脈弁欠損、三尖弁狭窄、右室低形成、動脈管開存、卵円孔開存の診断となった。心外の合併奇形はなかった。出生後肺動脈の拡張はなく気管・気管支の圧排は生じなかった。1か月時に右BTシャント、左肺動脈形成術を行った際に主肺動脈は離断した。5か月時に両方向性グレン手術、心房中隔欠損拡大を施行、1歳5か月時に心外導管を用いたフォンタン手術を施行、現在肺血管拡張薬を内服下に安定したフォンタン循環を維持している。【結論】本症例では肺動脈弁は欠損していたものの左室から肺動脈への血流の流入はなく、加えて三尖弁狭窄のため肺動脈を通過する血流が制限されたため肺動脈は拡張しなかった。その結果気道狭窄は見られず、順調にグレン手術、フォンタン手術と進むことができたと考えられる。心室中隔欠損を伴わない肺動脈弁欠損の症例において、肺動脈の拡張による気管・気管支病変は重症度に幅があり、極めて稀な疾患ではあるが今後の症例の蓄積によってメカニズムの解明が待たれる。