The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

複雑心奇形

デジタルオーラルII(P10)
複雑心奇形 3

指定討論者:高橋 邦彦(大阪母子医療センター)
指定討論者:北野 正尚(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター)

[P10-4] 上行大動脈の逆行性血流を認めた総肺静脈還流異常症を合併した三心房心の1例

木村 正人, 鈴木 大, 前原 菜美子, 六郷 由佳, 小澤 晃, 田中 高志 (宮城県立こども病院 循環器科)

Keywords:三心房心, 総肺静脈還流異常症, Lucas-Schmidt

三心房心は左房が異常隔壁によって肺静脈が還流する副腔と左心耳を含む左房(真腔)に分割される比較的稀な先天性心疾患である.重症例では肺うっ血のため新生児期より呼吸障害や心不全症状を認め緊急手術が必要となる.臨床的にはLucas-Schmidt分類が使用されることが多く,ASDやTAPVC・PAPVCを合併することで複雑な病態となることがある.症例は日齢0,在胎39週3日,2930gで出生した後に酸素投与に反応しないチアノーゼ,小さな左心系と上行大動脈の逆行性血流からHLHSが疑われ当院搬送となった.入院時の心エコーではMVやAVに形態的な異常を認めなかったが著明な右心系の拡大を認め,上行大動脈の血流は逆行性の血流であった.TAPVC(III)の合併と左心房内の隔壁の存在を認識していたものの,心房間の狭小化のために低心拍出状態となっていると考えた.入院後排尿がみられた頃右左シャントは増加し,上行大動脈の順行性血流も増加したが,翌日には再度心房間交通の減少と上行大動脈の逆行性血流、左室内腔の狭小化を認めた.造影CTの所見と合わせ,本症例は三心房心を合併し副腔がPVOの進行により拡張することで心房間交通を制限していると考え,同日緊急手術とした.術中所見では心房中隔欠損は大きく,その頭側にドーム状の副腔が確認されたが,副腔と左心房や副腔と右心房との交通は確認されず,その中央を切開したところ肺静脈が確認された.以上より,最終診断はLucas-Schmidt IIbとした.術後経過は良好で退院後の心エコーでもPVOの所見は認めなかった.出生後の低心拍出状態は拡張した副腔の圧迫による心房間血流の制限が主な原因と考えた.出生直後は短時間で血行動態が大きく変化することがあり,心エコーを繰り返すこと,必要に応じ造影CTを撮影することでより正確な診断をつけ,適切な手術介入のタイミングを検討することの重要性を再認識した.