[P11-1] 先天性心疾患に関連した僧帽弁狭窄症に対する運動負荷心臓超音波検査の有用性
Keywords:僧帽弁狭窄, 運動負荷心臓超音波検査, 先天性心疾患
【背景】僧帽弁狭窄(MS)は心拍数増加に伴って病態が悪化することがあり、成人領域では運動負荷心臓超音波検査(ESE)による評価が推奨される。リウマチ性や石灰化病変による成人MS患者に対するESEの報告は散見されるが、先天性心疾患を有する小児や若年成人については、MSに対するESEの有効性は過去に検討されていない。今回、臥位ergometerにてESEを行った3例を報告する。【症例】症例1:9歳女児。先天性僧帽弁閉鎖不全(cMR)に対し、6歳時に僧帽弁置換術を実施。安静、運動に関わらず不定期に現れる胸痛あり受診。安静時の経胸壁心エコー検査(TTE)では、僧帽弁平均圧較差(MSPG) 8 mmHg、推定右室圧(eRVP) 26 mmHg、心臓カテーテル検査(CC)ではGorlinの式による弁口面積(MVA)1.59 cm2であった。ESEではMSPG、TRPGは各々21 mmHg、45 mmHgまで上昇したが、その際に胸痛はみられず、MSと関連のない胸痛と診断することができた。症例2:22歳女性。完全房室中隔欠損に対し7か月時に心内修復術、1歳時、3歳時に僧帽弁閉鎖不全に対し弁形成術を実施。TTEのMSPG 6 mmHg、eRVP 33 mmHg、CCのMVA 1.05 cm2であった。ESEではMSPGは25 mmHgまで上昇したが、自覚症状は軽度の下肢疲労のみだった。無症状であるものの、妊娠出産時のMS増悪が予測されるため、妊娠前に生体弁置換が必要と診断し、informed consentを得た。症例3:35歳女性。cMRに対して21歳時に弁形成術を実施。1-2年前より易疲労感あり。TTEのMSPG 5 mmHg、eRVP 35 mmHg、CCのMVA 1.14 cm2であった。ESEではMSPGが11mmHgまで軽度上昇した時点で、下肢疲労あり終了した。運動負荷呼気ガス分析時にも同様に下肢疲労が強く、計測値より運動不足が示唆され、易疲労感はMSによるものではないと診断した。【結語】ESEは小児や若年成人のMSにおいて心拍増加時の循環動態変化を安全かつ正確に評価することができ、自覚症状と病状の関連、手術適応、妊娠可否の診断に有用である。