第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心臓血管機能

デジタルオーラルII(P14)
心臓血管機能 2

指定討論者:鎌田 政博(たかのばし中央病院)
指定討論者:桃井 伸緒(福島県立医科大学医学部小児科)

[P14-5] 完全大血管転位1型に対する大動脈スイッチ後の左室拡張末期圧上昇は周術期合併症と関連がある

額賀 俊介1, 塚田 正範1, 小澤 淳一1, 阿部 忠朗1, 沼野 藤人1, 杉本 愛2, 渡邉 マヤ2, 白石 修一2, 齋藤 昭彦1 (1.新潟大学大学院医歯学総合研究科 小児科学分野, 2.新潟大学大学院医歯学総合研究科 呼吸循環外科学分野)

キーワード:完全大血管転位, 左室拡張末期圧, 周術期合併症

【背景・目的】完全大血管転位1型(TGA/IVS)に対する大動脈スイッチ術(ASO)後、無症候性に心臓カテーテル検査で左室拡張末期圧(LVEDP)上昇を認める症例が存在する。この研究の目的はこれらの症例の背景・経過を調査すること。【対象・方法】対象は2010年1月1日~2020年12月31日に当院でTGA/IVSに対してASOを行った24例。術後1年での心臓カテーテル検査でLVEDPが13mmHg以上(H群:10例)と13mmHg未満(L群:14例)の2群に分け、診療録を元に後方視的に比較した。周術期合併症は、再手術、継続治療を要する不整脈などと定義し、一過性の不整脈や短期間の腔水症は除外した。2群間の比較にはStudentのt検定およびカイ2乗検定を用い、p<0.05を有意とした。【結果】在胎週数、出生体重は両群間で有意な差はなかった。術前管理では、心房中隔裂開術をH群5例 vs L群7例で要し、呼吸器管理は4例 vs 3例でいずれも有意な差はなかった。手術日齢は10.5日 vs 11.0日で有意差はなく、大動脈遮断時間と人工心肺時間も両群間に有意差を認めなかった。冠動脈Shaher分類は、24例のうち1型が16例(67%)と最も多く、1型以外はH群が4例でL群が4例だった。周術期死亡はなく、周術期合併症はH群で8例、L群で3例とH群で有意に多かった(p=0.01)。術後1年の心臓カテーテル検査は、H群およびL群でそれぞれ、LVEF 69 vs 69%、LVESP 90 vs 91mmHg、RVESP 37 vs 39mmHgなどでいずれも有意差はなかった。Sellers 2度以上の新大動脈弁閉鎖不全はH群の1例で認め、術後肺動脈狭窄に対してはH群2例、L群7例でカテーテル治療を要した。また、初回のカテーテル検査後、9例で複数回のカテーテル検査が行われ、直近のLVEDPは初回と比較して5例で低下、4例で上昇していた。【結語】TGA/IVSのASO後1年のカテーテル検査でLVEDPの高い症例は、周術期合併症の頻度が多かった。LVEF低下は認めないものの、潜在的な心機能低下が関与している可能性がある。