The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

一般心臓病学

デジタルオーラルII(P2)
一般心臓病学 2

指定討論者:辻井 信之(奈良県立医科大学 小児科)
指定討論者:北野 正尚(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター)

[P2-4] 学校での給食中にアナフィラキシー様症状を繰り返し診断が困難であった血管迷走神経反射の男児例

田代 克弥 (唐津赤十字病院 小児科)

Keywords:vasovagal reflex, anaphylactic reaction, LF/HF

症例は8歳男児。多種食物抗原によるアナフィラキシーの既往を複数回有し当院にもこの半年に4回の搬送歴があった。既に卵・乳・小麦・大豆・インゲン・キウイフルーツを除去され、エピペンも導入されていた。6歳まではアナフィラキシーは1回/年程度であったが、小学校入学後から2-4ヵ月毎と頻度が多くなり、7歳以降はほぼ1-2ヵ月毎に求職途中に顔色不良・咽頭違和感と腹痛で救急搬送されるようになった。しかし、症状出現時には誘因となる食物は同定されなかった。直近の搬送7回中4回は、搬送前にエピペンを使用しており、病院到着後もアドレナリン・抗ヒスタミン剤・ステロイドの静注で対処されたが効果に乏しい印象であった。搬送時はエピペン使用の有無に関係なく、心拍数はいずれも70-80/分と年齢に比して増加が乏しかった。また、救急室でのアドレナリン投与でも心拍は増加を認めなかった。アドレナリンへの反応が不良であることより、アナフィラキシー様にみえる迷走神経反射を疑い、8歳4カ月時の2回の搬送時にはそれぞれアトロピン・ブチルスコポラミンを投与したところ心拍の上昇と共に速やかな顔色改善・心拍の増加を認めた。この結果を踏まえてホルター心電図でLH/HFを調べたところ、終日に渡り迷走神経優位な状態を呈しており、児の病態に一致する所見であった。以上より、患児の症状は血管迷走神経反射であったと判断し、交感神経刺激薬と抗コリン薬の内服を導入したところ、LF/HFは正常化して発作も認めなくなった。血管迷走神経反射とアナフィラキシー症状は類似している点も多く鑑別が困難な場合も多い。過去にアナフィラキシーの既往がある場合には患児のように、治療効果が乏しくともアナフィラキシーの治療のみで片付けられることが多いと思われる。明らかな原因アレルゲンが不明で、アドレナリンが無効な場合には心拍数の変化に注目して迷走神経反射を疑う必要があると思われる。