The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

一般心臓病学

デジタルオーラルII(P2)
一般心臓病学 2

指定討論者:辻井 信之(奈良県立医科大学 小児科)
指定討論者:北野 正尚(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター)

[P2-5] 三尖弁腱索断裂を合併した乳児特発性僧帽弁腱索断裂例の病態考察

高梨 学1, 進藤 考洋1, 高見澤 幸一1, 小澤 由衣1, 林 泰佑1, 三崎 泰志1, 金子 幸裕2, 小野 博1, 賀藤 均1 (1.国立成育医療研究センター 循環器科, 2.国立成育医療研究センター 心臓血管外科)

Keywords:乳児特発性僧帽弁腱索断裂, 三尖弁腱索断裂, 抗SS-A抗体

【背景】乳児特発性僧帽弁腱索断裂は、生後4~6ヶ月の乳児に好発する原因不明の疾患である。同疾患に対する僧帽弁形成術後管理中、痛みを伴う処置による啼泣後に、三尖弁腱索断裂の併発を観察できた月齢1の乳児例を経験したので報告する。【症例】患児は、関節リウマチに罹患している抗SS-A抗体陽性母体より出生した(在胎41週0日、2626g)。日齢49頃より哺乳不良と嘔吐を認め、日齢52に近医を受診した。顔面蒼白と多呼吸、収縮期雑音を聴取し、心エコーで重度の僧帽弁逆流を認め、治療目的に当院へ搬送された。心エコーで僧帽弁腱索断裂を診断し、日齢54に僧帽弁形成術を施行したが、術後も僧帽弁逆流と肺高血圧に対する心不全治療を要した。日齢65に動脈ライン確保後に血圧が低下し、処置前に行った心エコーでは認められなかった三尖弁腱索の断裂と重度の三尖弁逆流が確認された。翌日に行われた三尖弁形成術の術中所見で前乳頭筋から後尖の腱索断裂が確認された。患児の抗SS-A抗体は、入院時220U/mL(基準値10.0未満U/mL)であったが、経時的な低下と陰性化を確認した。【考察】乳児特発性僧帽弁腱索断裂症例では、稀に三尖弁腱索断裂を併発する。その機序は僧帽弁における腱索断裂同様に明らかにされていない。本症例は病理学な検討が行えていないが、本疾患では三尖弁にも僧帽弁同様に病変が併存し、圧負荷などが加わることによって腱索断裂に進展する可能性が示された。本症例の発症が好発時期よりも早い点については、母体からの抗SS-A抗体の移行が関与している可能性も考えられ、三尖弁腱索断裂との関連性も含め、今後の症例蓄積を要する。【結語】抗SS-A抗体陽性の児は、生後1ヶ月でも僧帽弁腱索断裂を発症する可能性がある。また、乳児特発性僧帽弁腱索断裂では、三尖弁にも病変を併発している可能性を念頭に、心室負荷を軽減する等の慎重な急性期管理が望ましい。