[P20-4] LQT8におけるベラパミルの治療効果は遺伝子変異により異なる
キーワード:QT延長症候群, Timothy症候群, ベラパミル
【背景】QT延長症候群(LQTS)8型(LQT8)は、CACNA1C遺伝子変異によるL型Caチャネルの機能獲得変化が原因であるが、変異による電流の変化様式には多様性があり、特にピーク電流や不活性化への影響が変異により異なっている。また本疾患でのCa拮抗薬の有効性は十分には明らかにされていない。【目的】異なるCACNA1C遺伝子変異を持つLQT8症例でのベラパミルの有効性を検討する。【方法】LQT8と遺伝子診断された2家系2例(女性1例)を対象として、ベラパミル 0.1mg/kg(最大5mg)静注による心電図変化を検討した。【結果】 CACNA1C遺伝子変異と、ベラパミル投与時の年齢・性別は、症例1:R858H・20歳女性、症例2:G402S・1歳男児で、Bazett法による補正QT時間は、それぞれ472ms、485msであった。いずれの症例にも失神の既往があり、torsades de pointesが記録されていた。症例2では精神神経症状の合併を認めた。ベラパミル投与時、症例1、2ともβ遮断薬およびメキシレチン内服による治療を受けていた。ベラパミル投与前と投与後20分での心拍数およびFridericia法による補正QT時間は、症例1:(前)74/min・455ms、(後)68/min・438ms、症例2:(前)99/min・446ms、(後)88/min・445msであった。これまでの報告より、CACNA1C-R858HはL型Ca電流のピークの増大、G402Sは不活性化障害が主病態であると考えられている。症例2では、G402S症例の既報と一致して、ベラパミル投与によるQT短縮はみられなかった。今回、R858H保因者である症例1では明らかなQT短縮効果を認めた。【結論】LQT8におけるベラパミルの有効性、特にQT短縮効果はCACNA1C遺伝子変異により異なる可能性がある。